ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「吾妻の財布からでるので、遠慮せずに買いそろえると良いですよ」

「え? 副社長のポケットマネーなんですか?!」

そんなの余計に買い辛い。

(なんで? 経費でも変だけど本当にわけがわからない)

かかった支払い分は何年かかけてでも返そう。副社長に借りをつくるなんて恐ろしい。

「あの人見た目爽やかだけど、ぜったい腹黒い……」

動揺を隠しきれず心の声を漏らしてしまうと、それを聞いた七生は苦笑した。

「……俺も、あいつの金でプレゼントするなんて嫌だけどね」

「そうですよね」

値札を見ながら総額を計算していた文は、聞き逃す。
商品を睨みながら生返事をした。

研究室に返してくれれば、出世払いとかで返せる気がするんだけど。

「まあ、でもコーディネートは俺だから。俺好みにさせてもらう」

「はい?」

そこでようやく七生を振り向く。

「何か言いました?」

「契約というのは民法上、当事者同士が合意をすれば、つまり、口頭でイエスと言った時点で成立してます。吾妻は好きなだけ使って良いと意思表示をし、わたしはそれを承諾しました。後日の返還請求などあっても正当な理由がないかぎり拒絶することができます。
まぁ、あいつにとっては大した負担ではありませんよ。せっかくなので湯水のように金を使ってやりましょう」

七生は目を三日月にした。
それを見た文は背筋が冷えた。ぶるっと身震いする。

(弁護士怖い……)

前半は難しくてすぐに理解できなかったが、最後の言葉がすべてを物語っていた。

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