ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「いえ、不快なことなど。と旭川さんはお酒は強い方ですか?」

「あ、好きです。強くはないですけど、どの種類がどのくらの分量で酔うのかとか、次の日のむくみ計測すると、自分の体にはなんの穀物が合っているのかとか調べられて面白いですよね。
もちろん日々湿度などの条件が一律ではないので正確な実験とは言えませんが、だいたい月経周期に合わせて飲むと体調が同じなので誤差が少ないです」

「はぁ、周期ですか」

七生は変な返事をしたが、文はその検証の面白さを語った。

「わたしは、ワインが好きなのですが、最近では日本酒の方が翌日に残りにくいという結果はが出てます。
味わいの趣向と、体は別物ってことなんです。結果は体質なので、大衆には意味の無い実験ですけど、でもこれって、化粧品にも同じ事が言えるんですよ。サプリだと大丈夫なのに、つけるタイプだと肌が荒れるとか……」

すると七生は声を出して笑った。

「あ、データの信憑性をうたがってますか? ちゃんと毎回つまみも同じ物を用意してますし、摂取量や時間も計ってるんですよ」

「違いますよ。データどうこうではなく、自分で人体実験をやってるのが面白いんですよ……やっぱり面白い子だ」

笑いに紛れて、砕けたセリフも届く。
子供扱いをされていることが、未熟だと言われているようで悔しかった。

(わたしだって、もう三十歳目前なのになぁ)

しかも面白いとまで来たものだ。子供で面白い。それが自分に対する今の評価なのだろう。
憮然としながらその話題を終わらせると、刺身を口にする。

(あ、おいし)

新鮮な味に、現金にもすぐに気持ちが切り替わった。
こんな高級な食事を経費で食べれるなんて、秘書もたまには良いことがあるものだ。

まだ会食も序盤なのに、お酒のせいなのか七生は上機嫌に見えた。
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