ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「そちらは楽しそうですな。間宮君は秘書さんとも仲が良いのかね」

吾妻と話をしていた大山が、こちらに身を乗り出した。

「ご一緒する機会が多いですからね」

七生が応える。

「間宮君は優秀だな。実はこちらにこないかと誘ったらすげなく断られてしまってね」

大山はビールを煽りながらがははと笑う。

「やめてくださいよ専務。間宮をFUYOUに口説き落とすのに、手間暇かけたんですよ。それでも専任になってくれないんですからね」

吾妻も話に加わる。

「君たちは学生時代からの友人らしいじゃないか。間宮君もそれなのに靡かなかったのか? 不義理だな」

「より多くの事例と係わりたいだけですよ。ひとつの会社に絞ると経験できる事例が偏ってしまうので」

七生は誤魔化すように、半分になった大山のグラスにビールを継ぎ足した。

「そうだな。どの会社から声が掛かっても頑なだったのを知ってるぞ。それが急にFUYOUさんに重心をおくから、界隈では何が合ったかと話題になっていたんだ」

文もその噂を聞いていた。
やり手の七生は各業界、各社からアプローチがあり、顧問弁護士に就任したのも凄いことらしい。

「気になりますか? わたしは間宮が飛びつかずにはいられなくなる切り札を持っていたんですよ」

吾妻が意味深に言った。

「お、暴露なら大歓迎だ。無礼講だからどんどん喋るといい」

大山が面白がる。

「吾妻副社長?」

七生が微笑みながら威嚇をする。

「弱みを握られてるんですか? 間宮さんが?」

七生でも吾妻には敵わないことがあるのか。それは文も興味があった。

「旭川さんまで」

いつもならあり得ないが、七生が酒のネタになりつつあった。
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