ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
七生は僅かだが、動揺を見せる。
大山の秘書も交じってその場は盛り上がった。
文もお酒の力を借りて少し調子に乗る。

「そんな特ダネ、ぜひ知りたいですね」

すると、七生は文にだけ見えるようにすっと表情を変えた。

「わたしを知りたい? その言葉忘れずに。覚悟していてくださいね」

全身を、忘れていた恐怖が駆け巡った。

「っか、覚悟とは……?」

「旭川さんになら、いくらでも教えて差し上げますよ」

七生が顔を寄せ、互いの肩が触れる。淫靡な囁きに頭がくらっとした。
どういう意味だろう。
身の危険を感じる。

「いやあ、秘書さん、旭川君だっけ? 君もなかなかいい雰囲気を持っているね。不慣れだが一生懸命さがあっていい。今までの秘書とは違うタイプだ」

ひとしきり七生を揶揄うと、大山は次に文に矛先を向けた。
話が変わったことにほっとしたのも束の間、次は自分がネタにされる番のようだ。

「ええ、才色兼備も良いですが、製品を理解して愛情のある社員を採用したかったんです。その点、旭川は優れてまして」

吾妻の突然の褒め言葉に文は驚く。
期待を裏切らないよう努力は怠らないが、まだまだ褒められるような仕事は出来ていない。

「同感だね。自信をもって務めないといけない難しい仕事だが……これは別の会社の話だけどね、会社と製品の顔として身なりを整えるんじゃなくて、自分の為だけに着飾っている秘書を見かけるんだよ。プライドを持つ場所を、はき違えちゃうんだよねぇ」

「ええ」

頷きながら語る大山に、吾妻は深く頷いた。

文と大山の秘書は肩身が狭い。
大山の秘書は男性だったが、何か言いたそうに視線を合わせてきた。
そういった話は秘書が居ない場所でお願いしたい。
気まずくてしかたがない。
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