ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「旭川君はパーティーなどの経験は?」

「……は、いえ、ありません」

はい? と聞き返しそうになってなんとか飲み込む。
パーティーって、偉い人たちがやるテレビで見るようなものかな。

政治家が舞台でスピーチしているイメージだ。
あとはプリンセスの物語。ドレスを着て踊るやつ。
なぜそんな質問を?
嫌な予感がする。

「来週、うち会社の創立七十周年記念パーティーをやるんだ。君に倅を紹介したい。君も来るんだろう?」

文は内心目をひん剥いた。
パーティーのお誘い?!
勿論スケジュールは承知している。
しかしそれは、ベテランの三宅が行く事になっている。

トイレで盗み聞きした秘書たちの言い分だと、パーティーは気疲れするが御曹司たちとの出会いの場にもなるらしい。
文はそういった場は苦手で、全力で辞退させてもらっていた。

それがなぜ。
社交辞令? 断ってもいいの? ありがたく受ける? それって仕事? 

返事の仕方さえ分からなくて、テーブルの下で七生の膝をつねった。

「いてっ」

小さく呻いた。
七生が振り向き、いきなり何をするのだと表情で訴える。

(どうしたらいいの?!)

悲壮な顔で訴えると、七生は文の膝を叩いて宥めた。
まるでわかっているよとでも言うように。

「大山専務、旭川は着任したばかりで不慣れです。創立記念パーティーには、他の秘書を同行するつもりでおりまして……」

七生が助け船をだす。

「なんだ。間宮君が保護者みたいだな。それなら尚更うちで経験を積むと良い。それに、吾妻君のパートナーとして同行すれば、付き添いの予定であった秘書も出席できるし、問題ないだろう」

「わたしのですか? ふむ……」

吾妻に視線で是非を聞かれ、文は同じく視線で訴えた。

(パーティーとか無理!)

横から、微かに舌打ちが聞こえた気がする。
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