ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

特別個室ってなに?
嫉妬とか愛とか、なぞの単語まで飛んでいた。

しかもわたしが、七生に愛されている?
はっと乾いた笑いがでた。
あの男に愛だの恋だのなんて想像できない。

脳震盪だと言っていたから、おかしな幻想が見えてしまっているのかもしれない。

幾分混乱しながら周囲を見回すとナースコールが目に入る。
捻ると軋む体に鞭を打ち、腕をのばしてそれを押す。
すると同時に、男たちの会話をかき消すようにドアの向こうから呼び出し音が鳴った。


そうか。担当医と言っていたかも。
声をかければよかったと後悔しても遅く、話に夢中になっていたふたりはすぐに会話を切り、勢いよく扉を開けた。

「文?!」

想像通りの顔が飛び出す。
嫌味を言われるのを覚悟したが、七生は悲愴な面持ちでベッドに駆け寄るとがばりと文を抱きしめた。
文は呆然とする。

(――――はい?)

「なかなか目を覚まさないから心配したんだぞ」

スーツの襟から爽やかなコロンが香る。そこにシップの匂いが混じっていた。
やはり七生も怪我をしている。自分が原因だと申し訳なくなった。

「気分はどうだ?」

心配そうに頬を撫でるのは、文が務める化粧品会社、「FUYOU(ふよう)」の顧問弁護士である、間宮七生に間違いなかった。

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