ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
(ーーーーしかし、悠長にしていられないな)
着飾った彼女が大衆に披露されたことで、焦りが出た。
幾人もの社員たちに吾妻と一緒にいるのを目撃されていて、謎の美人が文だとばれるのは時間の問題だ。
それでなくとも最近雰囲気が変わって、人目を引くようになってきているのだから。
懇々と眠る彼女の頬をさらりと撫でる。
落ちる途中で頭を売ったらしく、たんこぶができていた。
CTも撮ったが異常なし。でも寝顔は青白くて心配だった。
「文……なんで君は、俺を怖がるのかな」
パイプ椅子を引きベッド脇に寄せる。すぐに抱きしめられる距離に落ち着くと、無防備な寝顔を見つめる。
仕事は厳しく。そこは譲れないが、他では優しいつもりだ。
男慣れしていないことを考慮しても、過剰に反応しすぎではないだろうか。
頼られたり、照れたりする様子も見られるのに。
理由もなく避けられている現状を再確認し苛立つ。
顔を眺めていると病室に宝城が来た。
パーティー終盤の事故だったため、時刻はすでに夜中だ。
夜勤の合間に顔を出してくれたらしい。