ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「キス、していい?」

聞きながらもう鼻がくっつきそうだ。

「いいって言う前にする気じゃない」

「嫌だって言ったらやらないさ」

文が黙ると、承諾ととらえたのか七生はゆっくりと唇を舐めた。

「甘くて美味しい」

それはシロップの味だ。
突っ込みたくても睨むことしかできない。
七生は真綿で首を絞めるように、毎日ジリジリと文を追いつめる。

「俺のこと好きになった?」

「ま、だ……わかりません」

恋人だったと聞かされて一週間も経っていない。

「わからないけど、キスは嫌じゃないんだよね?」

そうなのだ。
好きかどうかも思い出せていないのに、毎日キスばかりしている。
だって、七生の顔は極上だし、キスは蕩けるように優しくて気持ちがいい。

抱きしめられると緊張もするけど、自分を委ねていいんだなっていう安心感もある。
この人は自分を守ってくれる人だって思える。

「いやじゃ、ない……かも」

瞳で誘惑され、色気に充てられくらくらとした。

「好きだよ、文。君のすべてが好きだ」

キスが深くなる。
流し込まれる愛情に、毎回体が火照るのはなんでかな。
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