ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
社内一の人気を誇るという美人であり秘書課のエース、三宅と来たのはホテルのラウンジでもなく、お洒落なバーでもなく焼き肉だった。
三宅がトングを支配し、肉厚の牛タンを焼いてくれている。
「どんどん食べて。旭川さん痩せすぎなのよ」
お洒落なスーツが燻されていくが大丈夫だろうか。
「ありがとうございます」
「もっと体力つけて。慣れてなかったって理由があるにしろ、あれくらいで倒れられたらたまらないの」
「すみません……」
これまでの感謝とお詫びも兼ねて文が奢るつもりだったが、歓迎会をしていないからという理由で三宅が出してくれることになった。
突然の内示で引き継ぎも忙しくそんな暇はなかった事と、他メンバーから煙たがられていたという理由もある。
文も華やかな人たちと一緒だと気後れしてしまうため、積極的に交流しようとは思っていなかった。
比較的三宅だけは全体のオブザーバーというポジションでもあるので、執務室で顔を合わせることが多い。姉御的存在になりつつある。
「秘書課はどう?」
「すごくバイタリティー高いなって思います。仕事を成功させるには自分も磨かなくちゃで、研究室にはそういうのはないので、びっくりしました」
お皿に取り分けて貰ったお肉を頬張る。
ビールを頼みたいところだったが、怪我も完治していないので飲み物はウーロン茶にした。
ちょっと値の張るお店らしい。柔らかさとジューシーさに舌が喜ぶ。いつも食べているお肉より格段に美味しい。