夢見吉示録
 ここで少し、私の高校時代の話をしよう。
 私の高校生活はちょっぴり──いや、かなり変わっていた。
 廊下に出れば野球部やサッカー部の集団に取り込まれ、リズムに合わせて叩く手や謎の応援歌のようなものや歓声のようなものに囲まれるという、何も知らない人からしたらいじめにでも遭っているかと勘違いされそうな日常であった。
 スポーツで鍛え上げた筋骨隆々の男子生徒たちの輪の中に、おさげの女子生徒が一人。
 彼らが廊下の中央で輪をなして歌うなどして盛り上がっていたのには、意味がある。
 推測の域を出ないが、おそらく彼らは仲間の一人を応援していた。
 その仲間とは、野球部の主将である。私と主将はお互いに学校で知らない人はいないほどの校内の有名人で、そんな二人はいつしか好き合っていた。
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