【可愛がってあげたい、強がりなきみを】番外編「ゴージャスハネムーン・イン・ニューヨーク」

 ***

 郁美はいつでも変わらない。
 常にフラットに接してくれる。
 付き合う前も、付き合ってからも、そして結婚してからも。

 俺が〝榊原宗介〟ではなく、素の〝島内宗介〟に戻れるのは、彼女といるときだけだ。

 
 はじめて、取材で彼女の会社を訪ねた日。

 どこに行っても、つねにまとわりついてくる女性たちの粘っこい視線のなかで、郁美はただひとり、涼やかな視線で俺を見ていた。

 いや、もしかしたら“冷ややか”だったかもしれない。

 彼女のプレゼンの最中、不覚にも俺は居眠りしそうになっていたから。
 睡眠不足がピークに達してたとはいえ、にらまれても仕方がない。

 その視線が、俺にとっては思いのほか新鮮だった。

 そしてあらためて彼女に注目した。
 見れば見るほど、俺好みの女性がそこにいた。

 それからはただひたすら、彼女の気を引くことにやっきになった。
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