【可愛がってあげたい、強がりなきみを】番外編「ゴージャスハネムーン・イン・ニューヨーク」
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郁美はいつでも変わらない。
常にフラットに接してくれる。
付き合う前も、付き合ってからも、そして結婚してからも。
俺が〝榊原宗介〟ではなく、素の〝島内宗介〟に戻れるのは、彼女といるときだけだ。
はじめて、取材で彼女の会社を訪ねた日。
どこに行っても、つねにまとわりついてくる女性たちの粘っこい視線のなかで、郁美はただひとり、涼やかな視線で俺を見ていた。
いや、もしかしたら“冷ややか”だったかもしれない。
彼女のプレゼンの最中、不覚にも俺は居眠りしそうになっていたから。
睡眠不足がピークに達してたとはいえ、にらまれても仕方がない。
その視線が、俺にとっては思いのほか新鮮だった。
そしてあらためて彼女に注目した。
見れば見るほど、俺好みの女性がそこにいた。
それからはただひたすら、彼女の気を引くことにやっきになった。