【可愛がってあげたい、強がりなきみを】番外編「ゴージャスハネムーン・イン・ニューヨーク」
 向井にはすべてお見通しだったようで「彼女の名刺くれ」と言っても文句を言わずに俺に渡した。

 後で知ったことだが、そのころの俺は突然のブレイクに順応できず、一触即発の危うさに満ち満ちていたらしい。

 このままでは仕事をほっぽりだして、失踪してしまうんじゃないかと本気で心配していたようだ。

 そんなこともあって、向井も俺と郁美がうまくいくように望んでいた。

 その方が仕事が上手く行くと考えていたようだ。

 あの、鋭い切れ味を誇る俺のマネージャーは、初対面で郁美の本質を見抜いていたようだ。

 つまり、彼女がけっして俺の仕事を邪魔するような性格ではないことを。

 さすがの慧眼としか言いようがない。

 向井がマネージャーじゃなきゃ、もう早々に芸能界を引退していたと思う。
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