【可愛がってあげたい、強がりなきみを】番外編「ゴージャスハネムーン・イン・ニューヨーク」
「さて、行くか」
 彼は軽く手をあげ、ウェイターを呼んだ。

 五番街に居並ぶ、ドアマンが常駐しているハイブランドの路面店。

「こんなとこ、初めて」とわたしはちょっと緊張して、ごくりと息を呑む。

 一方の宗介はまったく気おくれすることなく、わたしの腰に手を添えて、ドアマンに軽く会釈して入店した。

「Good Afternoon、Sir.」

と、にこやかに迎えてくれた店員の女性に「ディナーに行くんだけど、この人に似合いそうな服を見繕って」と流暢な英語でお願いしてくれた。

「どう?」
 試着室から出て尋ねると、「うん、それがいい」と満足そうに頷いた。

 数点試着したうちで、宗介さんが一番気に入ったのが黒のストラップレスドレス。

 まるでセレブがレッドカーペットで着ているようなドレスで「着こなせないよ」とまたまた小声で囁いたけれど、「これにする」と宗介さんはさっさと会計を済ませてしまった。

 
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