【本編完結】誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる
「ビル?」

 辺りを見回しても一向に彼の姿が見当たらない。


「ビルー??!」

 数分あたりの森の中を探したが、彼は返事をすることもない。

(まずいわね、日が暮れる……!)

 さすがに森の中は街灯一つないため、このままだと探すのに困難になるどころか危険が高い。

「ビルー!!」
「よお、姉ちゃん。探し物はこれか?」
「え?」

 かけられた声に振り向くと、そこにはこのあたりでは見かけない質素でところどころ破れた服を着ている男二人と、その男のうちの一人の腕の中にはビルがいた。

「ビル!!」
「俺たちと出会ったのが運のつきだな」

 そう言いながら、ナイフをリーズのほうに向けてきて脅す。

「どういうつもり?」
「おっと、おとなしくきてもらおうか。こいつの命を救いたいだろ?」

 もう一人の男がビルの顔のあたりにナイフを突きつける。
 ビルは気を失っており、リーズの声かけに返事をしない──

(たぶんこのあたりの服装じゃないし、おそらくこの二人組はニコラが数日前に話してた人さらい……)

「どうした? おとなしくついて来る決心がついたか?」
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