【本編完結】誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる
 シロはその大きな肉球でリーズに襲い掛かろうとした男を踏みつけて動けなくしていた。
 男はその衝撃で気を失い、もう一人の男はシロの姿におびえてガタガタを震えている。

「ま、魔獣……?」
「(ふん、手を出した相手が悪かったな。ほら、騎士様が駆け付けたぞ)」

 リーズを捕らえていた男の首筋に剣が突きつけられた。

「離してもらおうか、私の妻を」
「──っ!!」
「ニコラ……」

 リーズの視線の先には剣を男に向けながら、睨みと怒りの声を出したニコラがいた。
 男がリーズを解放すると、ニコラはリーズを優しく片腕で抱きかかえる。

「君を怖い目に合わせた奴らに最大級の恐怖を与えるから待ってて」

 そう言ってニコラは、平常心を失いナイフを向けてきた男と交戦する。

「シロ、そちらの男は押さえつけたままにしておけよ」
「(私に命令するとはいいご身分だな)」

 シロが一人の男を押さえつけて動かなくしている間に、ニコラがもう一人の男と戦う。
 ナイフをくるくると回しながらニコラに素早く切りかかる。

「俺がナイフさばきで負けるわけねえだろぉ!!!」
「ふん、誰にものを言っている」


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