サンタクロースに執着されました
イブの前日、金曜日。
仕事帰り、私は駅前広場でやっているクリスマスマーケットに同僚と一緒に寄っていた。

「私も聖花(みか)も明日は彼氏とデートだしね。
ま、クリスマスイブイブってことで」

「そうですね」

立ち飲みテーブルで、ホットワインのカップを小さくあわせる。
彼女にも私にも、付き合っている彼氏がいた。

「しっかし聖花も、あんなヤツの仕事なんて引き受けなきゃいいのに」

「あー……」

同僚の苦言に、曖昧に笑って返す。
今日は年上女性社員から頼まれて、彼女の仕事を引き受けていた。
忙しいと言っていたわりに若い男性社員とのおしゃべりに花を咲かせていたし、自分がいいように利用されているのは知っている。
しかし、断れないのが私なのだ。

「……でも、夏目(なつめ)課長が手伝ってくれたので」

課長のおかげで、残業は三十分ほどで済んだ。
もう、感謝しかない。

「それより、彼氏とはどうなんですか?」

これ以上仕事の話はしたくなくて、話題を変える。

「なんかさー、初めてのクリスマスだからか
『僕に全部任せておいてください!』
って張り切ってるのが、微笑ましくって」

笑いながら同期がカップを口に運ぶ。
彼女が今の彼氏と付き合いはじめたのはほんの一ヶ月ほど前。
しかも三つ年下の、二十三歳となれば可愛いだろう。
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