サンタクロースに執着されました
「うん。
タダの後輩じゃないっていうのがね。
サヨウナラ」

にっこりと笑って言い渡し、勢いよく踵を返してその場を去った。

「聖花、待てよ!」

すぐに彼の声は背中から追ってきたが、彼自身は追ってきてくれない。
一緒にいた彼女が引き留める声も聞こえていたし、きっとあちらを選んだんだろう。

「……最悪」

駅構内を歩きながら、出てきた涙を気づかれないように拭う。
きっと今、ひとりだったら大泣きしていた。
人前なのが救いかもしれない。

ホームに出て、ちょうど来た電車に乗る。
なにも言わずに残してきた同僚には悪いことをしたので、謝ろうと携帯を出したら彼からいくつもメッセージが届いていた。

【本当に彼女はタダの後輩で、誤解だ】

【明日!
明日のデート、待ってるから。
聖花の好きなあの店、予約してあるんだ。
他にもいろいろ考えてるし。
な、これで機嫌直してくれ】

【じゃあ明日、待ってる】

一方的に彼の話は終わっていて、重いため息が出る。
タダの後輩は先輩に腕を絡ませたりしないのだ。
誤解もへったくれもない。
彼のメッセージは既読スルーして、同僚に謝罪の言葉を送る。
彼女も状況を把握していたみたいで、気にしないでいいと返ってきてありがたかった。


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