落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化】
第4章 十年前の少女
第25話 表と裏
王都からイングリス山の山頂までは、狭くて急な山道が続いていた。
木立の間を縫うように走る道に沿って、アーノルト殿下と私が乗った馬はゆっくりと登っていく。
恋占いをするためには、月の光が必要だ。おのずと私たちの出発は夕刻となり、山道を登っている最中に辺りは暗くなってしまった。
空には、下弦の月がはっきりと見える。
今のところ雨が降る気配はなく、薄雲がところどころ空を覆っているだけ。満月の夜には劣るが、恋占いには支障がなさそうだ。
私は暗くなった道を照らすため、用意していた小型のランプを取り出した。
「ローズマリー様にランプを貸して頂けて良かったです。この明かりがなかったら、私たちはきっとあの川に真っ逆さまですよ」
馬の上から少し身を乗り出すようにして崖の下を覗いてみると、川の水面がランプの明かりを反射してキラキラと光った。ここから落ちればひとたまりもない。ブルっと肩を震わせて、私は崖から目を逸らした。
「魔力を込めたランプか。そんなものがあるのだな」
私と同じ馬に乗っているアーノルト殿下は、ランプを見ながら感心している。予めローズマリー様の魔力が十分に込められたランプは、私たちが山を降りる時間くらいまでは持ちそうだ。
その代わり、一度灯りが消えてしまえばもう点けられない。ローズマリー様からは「絶対に明かりを消さないようにね!」と念を押された。
両手の平に収まるほどの小さなランプを馬の進行方向にかざし、私はできるだけアーノルト殿下に背中が触れないように前かがみになって馬にしがみついていた。
(まさか同じ馬に乗って山に向かうなんて、思っていなかったのよね……)
木立の間を縫うように走る道に沿って、アーノルト殿下と私が乗った馬はゆっくりと登っていく。
恋占いをするためには、月の光が必要だ。おのずと私たちの出発は夕刻となり、山道を登っている最中に辺りは暗くなってしまった。
空には、下弦の月がはっきりと見える。
今のところ雨が降る気配はなく、薄雲がところどころ空を覆っているだけ。満月の夜には劣るが、恋占いには支障がなさそうだ。
私は暗くなった道を照らすため、用意していた小型のランプを取り出した。
「ローズマリー様にランプを貸して頂けて良かったです。この明かりがなかったら、私たちはきっとあの川に真っ逆さまですよ」
馬の上から少し身を乗り出すようにして崖の下を覗いてみると、川の水面がランプの明かりを反射してキラキラと光った。ここから落ちればひとたまりもない。ブルっと肩を震わせて、私は崖から目を逸らした。
「魔力を込めたランプか。そんなものがあるのだな」
私と同じ馬に乗っているアーノルト殿下は、ランプを見ながら感心している。予めローズマリー様の魔力が十分に込められたランプは、私たちが山を降りる時間くらいまでは持ちそうだ。
その代わり、一度灯りが消えてしまえばもう点けられない。ローズマリー様からは「絶対に明かりを消さないようにね!」と念を押された。
両手の平に収まるほどの小さなランプを馬の進行方向にかざし、私はできるだけアーノルト殿下に背中が触れないように前かがみになって馬にしがみついていた。
(まさか同じ馬に乗って山に向かうなんて、思っていなかったのよね……)