落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化】
第27話 あの日の出会い
アーノルト殿下の運命の相手は、私ではなかった。
前回と比べると月の光も弱く、雨粒にも邪魔されて鮮明には見えなかった。しかし、水面に映った赤いドレスは間違いなくリアナ様のものだった。そしてあの、風になびく艶やかな銀髪も。
(殿下の運命の相手、変えることができたんだわ――)
隣でアーノルト殿下が何かを喋っているが、耳に全く入ってこない。冷たい川の水に腰を付けたまま、私は流れていく殿下の上着を目で追った。
そもそも私が殿下の運命の相手だったことの方がおかしかったのだ。
アーノルト殿下はリアナ様が運命の相手であることを元々望んでいたし、リアナ様だって私に嫉妬の目を向けるほど殿下のことを想っていた。
これできっと大丈夫だ。
誕生日までの間、殿下とリアナ様にはゆっくり二人の時間を過ごして頂こう。そうすれば、自然と二人の心は近付くはずだ。もしお互いの心が通じ合うのが間に合わなくても、最終手段としてローズマリー様もいるではないか。
もう私は、殿下と共に王都にいる必要はない。
「……ディア……クローディア!」
「え?」
「早く川から上がって。雨も降って来たし、いつまでも水に浸かっていては風邪を引く」
前回と比べると月の光も弱く、雨粒にも邪魔されて鮮明には見えなかった。しかし、水面に映った赤いドレスは間違いなくリアナ様のものだった。そしてあの、風になびく艶やかな銀髪も。
(殿下の運命の相手、変えることができたんだわ――)
隣でアーノルト殿下が何かを喋っているが、耳に全く入ってこない。冷たい川の水に腰を付けたまま、私は流れていく殿下の上着を目で追った。
そもそも私が殿下の運命の相手だったことの方がおかしかったのだ。
アーノルト殿下はリアナ様が運命の相手であることを元々望んでいたし、リアナ様だって私に嫉妬の目を向けるほど殿下のことを想っていた。
これできっと大丈夫だ。
誕生日までの間、殿下とリアナ様にはゆっくり二人の時間を過ごして頂こう。そうすれば、自然と二人の心は近付くはずだ。もしお互いの心が通じ合うのが間に合わなくても、最終手段としてローズマリー様もいるではないか。
もう私は、殿下と共に王都にいる必要はない。
「……ディア……クローディア!」
「え?」
「早く川から上がって。雨も降って来たし、いつまでも水に浸かっていては風邪を引く」