落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化】
聖女候補生になったばかりの頃は、司祭様に「将来有望だね」などと言われたこともある。聖女として活躍することを、少なからず期待されていたはずだ。しかしその後は落ちこぼれ一直線。何でも上手にこなすローズマリー様に泣きついては、慰めてもらう日々だった。
あの祝福の儀の前日だって、緊張する私をローズマリー様が――。
(ローズマリー様がいつだって側にいてくれて、私に回復魔法をかけてくれた)
「ローズマリー様……」
「ローズマリー嬢が、どうした? 何か心当たりでも思い出した?」
「いつも私が落ち込んだ時は、ローズマリー様が私のことを慰めてくれていました。同じベッドで眠ってくれて、いつも背中をポンポンと優しく――」
私がそこまで口にしたその時。
洞窟の外、山の向こうの方で、いつか耳にしたことがあるような嫌な音がした。ドーンという低い音に驚いた私たちは、思わず耳を押さえてその場にうずくまる。
音が止むと共に再び地面が揺れ始め、洞窟の天井からはパラパラと小石が落ちて来た。地面の揺れはおさまらないどころか、徐々に強くなっていく。
私は思わず立ち上がって殿下の腕を引いた。
「殿下、早く外へ! 洞窟が崩れるかもしれません!」
「そうしよう! ディアこっちだ!」
ひび割れていく天井から落ちて来る小石から頭を守りながら、私たちは急いで洞窟の外に走り出る。
(アーノルト殿下、こんな時こそ兜被っていればよかったのに)
そんなどうでもいいことを考えながら洞窟の中を振り返る。
するとローズマリー様のランプがゆらゆらと光を放ち、洞窟内に残された兜がそれを受けて光った。
「……あっ、ランプ!」
「ディア、待て。私が取りにいく」
「いえ、私が行きます!」
こんな山奥でランプを失くしては、身動きが取れなくなってしまう。
洞窟が崩れる前にランプを洞窟から出さなければ。そう思った瞬間、私の足はもう一度洞窟の中に向いていた。焦って私を制止するアーノルト殿下の腕を振り切って、洞窟の中に飛び込む。
ランプを手にして殿下の方を振り返ると、殿下も私を追って洞窟に入ろうとしているのが見えた。
「殿下、すぐに出ますからこっちに来ないで!」
私の声は、最後まで殿下に届いただろうか。
殿下に向かってランプを投げてパスし、洞窟の外に向かって足を踏みだした瞬間。メリメリと音を立てて天井がひび割れ、土砂が私の上に崩れ落ちて来た。
(危ない、殿下!)
ほんの一瞬の間に、私の視界は闇に包まれた。
あの祝福の儀の前日だって、緊張する私をローズマリー様が――。
(ローズマリー様がいつだって側にいてくれて、私に回復魔法をかけてくれた)
「ローズマリー様……」
「ローズマリー嬢が、どうした? 何か心当たりでも思い出した?」
「いつも私が落ち込んだ時は、ローズマリー様が私のことを慰めてくれていました。同じベッドで眠ってくれて、いつも背中をポンポンと優しく――」
私がそこまで口にしたその時。
洞窟の外、山の向こうの方で、いつか耳にしたことがあるような嫌な音がした。ドーンという低い音に驚いた私たちは、思わず耳を押さえてその場にうずくまる。
音が止むと共に再び地面が揺れ始め、洞窟の天井からはパラパラと小石が落ちて来た。地面の揺れはおさまらないどころか、徐々に強くなっていく。
私は思わず立ち上がって殿下の腕を引いた。
「殿下、早く外へ! 洞窟が崩れるかもしれません!」
「そうしよう! ディアこっちだ!」
ひび割れていく天井から落ちて来る小石から頭を守りながら、私たちは急いで洞窟の外に走り出る。
(アーノルト殿下、こんな時こそ兜被っていればよかったのに)
そんなどうでもいいことを考えながら洞窟の中を振り返る。
するとローズマリー様のランプがゆらゆらと光を放ち、洞窟内に残された兜がそれを受けて光った。
「……あっ、ランプ!」
「ディア、待て。私が取りにいく」
「いえ、私が行きます!」
こんな山奥でランプを失くしては、身動きが取れなくなってしまう。
洞窟が崩れる前にランプを洞窟から出さなければ。そう思った瞬間、私の足はもう一度洞窟の中に向いていた。焦って私を制止するアーノルト殿下の腕を振り切って、洞窟の中に飛び込む。
ランプを手にして殿下の方を振り返ると、殿下も私を追って洞窟に入ろうとしているのが見えた。
「殿下、すぐに出ますからこっちに来ないで!」
私の声は、最後まで殿下に届いただろうか。
殿下に向かってランプを投げてパスし、洞窟の外に向かって足を踏みだした瞬間。メリメリと音を立てて天井がひび割れ、土砂が私の上に崩れ落ちて来た。
(危ない、殿下!)
ほんの一瞬の間に、私の視界は闇に包まれた。