落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化】
「リアナ嬢、申し訳ないがディアをよろしく頼む」
「心得ております」
「ディア、また見舞いにくるよ。リアナ嬢に頼って、しっかり休んでくれ」
リアナ様は殿下のお見送りのために、一緒に部屋を出て行った。代わりにその場に残ったガイゼル様が私のベッドの近くまで来たが、その表情は明らかな呆れ顔だ。
「はあ……」
「ガイゼル様、そんな大きなため息つかなくても……私だって本当は心から土下座して謝罪したい気持ちでいっぱいですよ。でも今はちょっとできないです。ごめんなさい」
腕を組んだガイゼル様は、気怠そうに頭を横に振る。
「いや、アーノルト殿下を命がけで守ってくれて感謝してる」
「そんなことは……殿下を突き飛ばしたことなんて覚えていないですし。無意識です。ちなみに私、このままリアナ様のところにいて大丈夫でしょうか? リアナ様も良い気持ちはしないのでは?」
「それは心配しなくていい。とりあえずディアが無事で良かったよ」
椅子に座ったガイゼル様の表情は暗い。口からは感謝の言葉を発しても、内心では私のことを許せるはずがない。ガイゼル様が忠誠を誓うアーノルト殿下に怪我をさせてしまった張本人は、私なのだから。
「心配しなくてもいいと言われても、心配してしまいます。リアナ様にご迷惑をおかけする訳にはいきません」
「いや、リアナ嬢にとっても良いことだと思う。今回の一件をきっかけに、正式に殿下とリアナ嬢との婚約が進みそうなんだ」
(――え? どういうこと?)
「怪我をしたアーノルト殿下を介抱してくれたヘイズ侯爵家に、国王陛下がとても感謝している。王太子殿下を助けた手柄に報いるために、正式に殿下とリアナ嬢が婚約するっていう筋書きになりそうだ」
「そんな……」
「ディアも、殿下とリアナ嬢の婚約を願ってただろ?」
私はガイゼル様の言葉を聞いて絶句する。
(そうだった。私はアーノルト殿下とリアナ様の婚約を願っていたはず。無事にリアナ様が運命の相手になったのだから、喜ばなければいけないはずなのに……でも……)
「ガイゼル様は大丈夫ですか?」
「は?」
「殿下とリアナ様がこのまま婚約しても、いいのですか?」
「ディア……お前、リアナ嬢と同じことを聞くんだな。二人の婚約はめでたいに決まっているだろう。ディアこそ、もっと喜べばいい。ディアの変態レッスンが少しは殿下の役に立ったのかもしれないぞ」
ガイゼル様はそう言うと、私に背を向けた。
「心得ております」
「ディア、また見舞いにくるよ。リアナ嬢に頼って、しっかり休んでくれ」
リアナ様は殿下のお見送りのために、一緒に部屋を出て行った。代わりにその場に残ったガイゼル様が私のベッドの近くまで来たが、その表情は明らかな呆れ顔だ。
「はあ……」
「ガイゼル様、そんな大きなため息つかなくても……私だって本当は心から土下座して謝罪したい気持ちでいっぱいですよ。でも今はちょっとできないです。ごめんなさい」
腕を組んだガイゼル様は、気怠そうに頭を横に振る。
「いや、アーノルト殿下を命がけで守ってくれて感謝してる」
「そんなことは……殿下を突き飛ばしたことなんて覚えていないですし。無意識です。ちなみに私、このままリアナ様のところにいて大丈夫でしょうか? リアナ様も良い気持ちはしないのでは?」
「それは心配しなくていい。とりあえずディアが無事で良かったよ」
椅子に座ったガイゼル様の表情は暗い。口からは感謝の言葉を発しても、内心では私のことを許せるはずがない。ガイゼル様が忠誠を誓うアーノルト殿下に怪我をさせてしまった張本人は、私なのだから。
「心配しなくてもいいと言われても、心配してしまいます。リアナ様にご迷惑をおかけする訳にはいきません」
「いや、リアナ嬢にとっても良いことだと思う。今回の一件をきっかけに、正式に殿下とリアナ嬢との婚約が進みそうなんだ」
(――え? どういうこと?)
「怪我をしたアーノルト殿下を介抱してくれたヘイズ侯爵家に、国王陛下がとても感謝している。王太子殿下を助けた手柄に報いるために、正式に殿下とリアナ嬢が婚約するっていう筋書きになりそうだ」
「そんな……」
「ディアも、殿下とリアナ嬢の婚約を願ってただろ?」
私はガイゼル様の言葉を聞いて絶句する。
(そうだった。私はアーノルト殿下とリアナ様の婚約を願っていたはず。無事にリアナ様が運命の相手になったのだから、喜ばなければいけないはずなのに……でも……)
「ガイゼル様は大丈夫ですか?」
「は?」
「殿下とリアナ様がこのまま婚約しても、いいのですか?」
「ディア……お前、リアナ嬢と同じことを聞くんだな。二人の婚約はめでたいに決まっているだろう。ディアこそ、もっと喜べばいい。ディアの変態レッスンが少しは殿下の役に立ったのかもしれないぞ」
ガイゼル様はそう言うと、私に背を向けた。