落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化】
「それで殿下。一体どうなさいますの? その胸の呪いは」
「……」
「せっかく運命の相手にファーストキスを捧げれば呪いが解けるように『おまけ』を付けてあげましたのに。運命の相手が誰なのか考えもせず、恋占いなんかに頼られるものだから……随分とイライラ致しましたわ」
「……おまけを付けた、か。つまり私の呪いは、君がかけたものだな?」
私の肩に置いた殿下の手に力が入る。
もう薄々分かっていた。アーノルト殿下に呪いをかけたのは、ローズマリー様だということを。そしてきっと、私の背中にある呪いもローズマリー様がかけたものだろう。
殿下の呪いを解く方法は三つあると、ローズマリー様は言った。
一つ目は、殿下が運命の相手にファーストキスを捧げること。
二つ目は、呪いをかけた張本人を消すこと。
そして三つ目は、呪詛文字を読み解ける強い魔力を持った者に、殿下がファーストキスを捧げること。
私がローズマリー様に「殿下の運命の相手は私だった」なんて伝えてしまったから、背中にこんな呪いをかけられてしまったのだろうか。
だとしたら、私も十二時の鐘と共に死んでしまうのだろうか。
(お母さん……私、もうすぐお母さんのところに行くかもしれない。でも、最後までちゃんと人の役に立って徳を積んでからにするよ。でないと、天国にいるお母さんに会えないから)
アーノルト殿下の命だけは絶対に助ける。
どうすればいいのか分からないけれど、残り十分でできるだけのことはしたい。
背中の傷の痛みがピリッと体中を駆け抜けて、私はその場で倒れ込んだ。
「ディア! 大丈夫か」
「殿下、私に構わず……とりあえず、ローズマリー様とキスを……」
「ディア……背中のこの傷は……?」
地面に座り込んだ私の背中が、立っているアーノルト殿下に見えてしまったのだろう。先ほどガイゼル様が見つけた私の背中の呪詛文字が、殿下に知られてしまった。
「ディア、まさか君も呪いを……?」
「殿下、早くローズマリー様にキスを」
私たちに残された選択肢はそれしかない。
私の背中の呪いの解呪方法なんて、確認している時間はない。日付が変わるまで、残り十分を切っているのだから。
「……」
「せっかく運命の相手にファーストキスを捧げれば呪いが解けるように『おまけ』を付けてあげましたのに。運命の相手が誰なのか考えもせず、恋占いなんかに頼られるものだから……随分とイライラ致しましたわ」
「……おまけを付けた、か。つまり私の呪いは、君がかけたものだな?」
私の肩に置いた殿下の手に力が入る。
もう薄々分かっていた。アーノルト殿下に呪いをかけたのは、ローズマリー様だということを。そしてきっと、私の背中にある呪いもローズマリー様がかけたものだろう。
殿下の呪いを解く方法は三つあると、ローズマリー様は言った。
一つ目は、殿下が運命の相手にファーストキスを捧げること。
二つ目は、呪いをかけた張本人を消すこと。
そして三つ目は、呪詛文字を読み解ける強い魔力を持った者に、殿下がファーストキスを捧げること。
私がローズマリー様に「殿下の運命の相手は私だった」なんて伝えてしまったから、背中にこんな呪いをかけられてしまったのだろうか。
だとしたら、私も十二時の鐘と共に死んでしまうのだろうか。
(お母さん……私、もうすぐお母さんのところに行くかもしれない。でも、最後までちゃんと人の役に立って徳を積んでからにするよ。でないと、天国にいるお母さんに会えないから)
アーノルト殿下の命だけは絶対に助ける。
どうすればいいのか分からないけれど、残り十分でできるだけのことはしたい。
背中の傷の痛みがピリッと体中を駆け抜けて、私はその場で倒れ込んだ。
「ディア! 大丈夫か」
「殿下、私に構わず……とりあえず、ローズマリー様とキスを……」
「ディア……背中のこの傷は……?」
地面に座り込んだ私の背中が、立っているアーノルト殿下に見えてしまったのだろう。先ほどガイゼル様が見つけた私の背中の呪詛文字が、殿下に知られてしまった。
「ディア、まさか君も呪いを……?」
「殿下、早くローズマリー様にキスを」
私たちに残された選択肢はそれしかない。
私の背中の呪いの解呪方法なんて、確認している時間はない。日付が変わるまで、残り十分を切っているのだから。