落ちこぼれ聖女ですが、王太子殿下のファーストキスは私がいただきます!【書籍化】
「――やめてよ、ディア!」
「やめません。私はずっとローズマリー様を信じていました。あの頃ローズマリー様が私に対して向けてくれた優しさには、嘘なんて一つもなかったはずです。私はローズマリー様を信じたいんです」
「違う、違うわ! 私はディアのこともリアナのこともずっと憎かったの。妬んで憎んでいたのよ! 早くその魔法をやめなさい!」
黒いモヤと青白い光がお互いに反発し合うように渦を巻き、青い光が触れる度にローズマリー様が苦痛に顔を歪める。
「駄目だって言っているでしょ! 私はディアやリアナに負けたくない、悔しいっていう気持ちだけを支えに生きて来たの。この気持ちがなくなったら、私はどうしたらいいの? 早く魔法をおさめて!」
「嫌です! 悪事を積み重ねたって何も生まれません! ローズマリー様もアーノルト殿下もリアナ様も、誰一人救われないわ」
――ゴーン
もう何回目かの鐘が鳴る。
早くローズマリー様の黒いモヤを浄化して、一刻も早くアーノルト殿下の呪いを解いてもらいたい。私は一層両手に力を込めた。
すると、黒いモヤが少しずつローズマリー様からはがれ始める。
先ほどまでふんわりと吹いていた風が、ローズマリー様の魔力の抵抗で突風に変わった。煽られてよろめいた私の背中を、アーノルト殿下が受け止める。
「ディア! 大丈夫か」
「殿下、ありがとうございます! もう少し、時間がないから……急がないと」
ローズマリー様は苦しそうに地面に座り込むと、爪を立ててギリギリと土を掴んでいる。
(もし本当に私に強い魔力があるのなら、十二時の鐘が鳴り終わる前にローズマリー様の心を鎮めて下さい。そして、殿下の呪いを解いて……!)
「……やめてよ、諦めたくないの! 卑怯な手を使ってでもいいから、アーノルト殿下を手に入れたかった。私だって報われたかった」
「ローズマリー様! いくら聖女と言えど、魔力で人の心を変えてはいけないのです。昔、ローズマリー様が私に優しくしてくださったように、人の心を変えるのは魔力ではなくてローズマリー様の誠実な心だけです!」
「心を操っているのはあなたの方じゃないの! 私の心を変えないで!」
「私はローズマリー様の心を魔力で変えているのではありません。ローズマリー様に救う邪な気持ちを取り除いて、本当のローズマリー様に戻ってもらおうとしているんです!」
「やめません。私はずっとローズマリー様を信じていました。あの頃ローズマリー様が私に対して向けてくれた優しさには、嘘なんて一つもなかったはずです。私はローズマリー様を信じたいんです」
「違う、違うわ! 私はディアのこともリアナのこともずっと憎かったの。妬んで憎んでいたのよ! 早くその魔法をやめなさい!」
黒いモヤと青白い光がお互いに反発し合うように渦を巻き、青い光が触れる度にローズマリー様が苦痛に顔を歪める。
「駄目だって言っているでしょ! 私はディアやリアナに負けたくない、悔しいっていう気持ちだけを支えに生きて来たの。この気持ちがなくなったら、私はどうしたらいいの? 早く魔法をおさめて!」
「嫌です! 悪事を積み重ねたって何も生まれません! ローズマリー様もアーノルト殿下もリアナ様も、誰一人救われないわ」
――ゴーン
もう何回目かの鐘が鳴る。
早くローズマリー様の黒いモヤを浄化して、一刻も早くアーノルト殿下の呪いを解いてもらいたい。私は一層両手に力を込めた。
すると、黒いモヤが少しずつローズマリー様からはがれ始める。
先ほどまでふんわりと吹いていた風が、ローズマリー様の魔力の抵抗で突風に変わった。煽られてよろめいた私の背中を、アーノルト殿下が受け止める。
「ディア! 大丈夫か」
「殿下、ありがとうございます! もう少し、時間がないから……急がないと」
ローズマリー様は苦しそうに地面に座り込むと、爪を立ててギリギリと土を掴んでいる。
(もし本当に私に強い魔力があるのなら、十二時の鐘が鳴り終わる前にローズマリー様の心を鎮めて下さい。そして、殿下の呪いを解いて……!)
「……やめてよ、諦めたくないの! 卑怯な手を使ってでもいいから、アーノルト殿下を手に入れたかった。私だって報われたかった」
「ローズマリー様! いくら聖女と言えど、魔力で人の心を変えてはいけないのです。昔、ローズマリー様が私に優しくしてくださったように、人の心を変えるのは魔力ではなくてローズマリー様の誠実な心だけです!」
「心を操っているのはあなたの方じゃないの! 私の心を変えないで!」
「私はローズマリー様の心を魔力で変えているのではありません。ローズマリー様に救う邪な気持ちを取り除いて、本当のローズマリー様に戻ってもらおうとしているんです!」