英玲奈様は青い瞳に恋してる
とくとく、とくとく、心臓は、スピードを増して、胸が、いっぱいで苦しくなってくる。

「ここ数年、そのお姫様が、甘いものが苦手な僕の為に、ココアマフィンを焼いてきてくれるのが楽しみでね。だから……今年も待ってたんだ……」

まだ足りない。まだ自信がない。まだ欲しい。

私は、高鳴る胸を抑えるように、掌で握りしめたまま麗夜に訊ねた。

「その……お姫様の……名前は?」

麗夜が、ほんの少しだけ頬を染めると頭を掻いた。

「言わなきゃダメかな?」

「言って」

聞きたいの。
麗夜の口から麗夜の声で。
いつもいつも名前を呼んで欲しいから。

「英玲奈」

あっという間に、麗夜の顔は、見えなくなった。

「だと思ってたー」、なんて明るく言うつもりだったのに、言葉なんて何一つでてこなかった。
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