英玲奈様は青い瞳に恋してる
一人で住んでいる都内の、タワーマンションの最上階で、大好きな、ピンク色のインテリアに囲まれながら、私は、悪戦苦闘していた。

YouTubeeを眺めながら、ボウルにマフィン生地をいれかき混ぜながら、ココアパウダーを少しずつ加えていく。

「もうっ、難しいっ」

元々料理が、苦手な上に、ネイルが、邪魔で指先が使いにくい。さっき、焼き上げてから、最後に乗せるアーモンドを細かく切り刻んでいただけで指先を2箇所も切ってしまった。

今日は、あれから、麗夜の部屋を後にしてから、雑誌の撮影をして、関係者と夜ご飯を食べてから家に戻った私は、お風呂も入らずココアマフィン作りに没頭している。

「やだっ、もう23時じゃん」

ここ数年、麗夜に手作りしたものを食べてほしくて、こうしてバレンタインデー前夜は、お菓子作りをしているが、ちっとも上達しない自分が、嫌になる。

「一緒に過ごせなくても……渡すくらいいよね」

甘いものが、苦手な麗夜は、いつも下手くそな私のマフィンを残さず食べてくれる。

そして、大きな藍色の瞳を細めて、頭をポンと撫でてくれるのだ。その大きな、あったかい掌が私は大好きだった。幼い頃から。
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