英玲奈様は青い瞳に恋してる
空を見上げれば、もう夕陽が沈みかけている。

「意外と遅くなっちゃった」

撮影のあと、すぐに麗夜の専務室を訪ねるつもりだったが、先日フライデイされたモデルから、しつこく食事に誘われて、マネージャーからも、話題作りに一度位行って来て欲しいと言われた私は、仕方なくスタジオ近くのカフェでお茶をしたのだ。

高身長で、勿論、顔も悪くない。何なら、はっきりとした顔立ちで、好みの顔だ。さらにバイリンガルの彼は、どこか麗夜に似ていて、もしも麗夜と出会っていなければ、恋に落ちていたかもしれない。

(でも、彼は、麗夜じゃない。だから興味ない)

下心丸出しで、ホテルディナーに誘われたが、私は、バッサリ断ると、ココアマフィンを抱えて、安堂不動産のエントランスをくぐり抜けた。

専務室に向かって、いつもの廊下を歩いていくと、ちょうど麗夜の声が、聞こえてきた。

「……さん……美味しく……ありがとう」

「こちらこそ……専務……いつも……」

私は、思わずピンヒールのブーツの足音を鳴らさないよう静かに歩いて、廊下の角から、そっと覗き込む。
< 7 / 14 >

この作品をシェア

pagetop