少女達の青春群像 ~途切れなかった絆~
あっという間に9時になり、この店は一旦出ることになった。店の外で幹事グループがこれからどうするか話し合っている。響歌達はそこから少し離れた場所で彼女達が話し終わるのを待っていた。
待っている間、話せなかった違うグループの人達とも話していた。高校時代に隠れて先生とつき合っていた人が、卒業後に先生と結婚して子供ができたらしい。その子供の写真とかも見せてもらっていたりしていた。その時、サトルの姿を発見。近くにいたので声をかけてみた。
「サトルじゃない。元気にしているの?」
「あっ、う、うん」
「仕事はどう。まだ続いているの?」
「うん」
「そういえばサトルって、魔法少女アニメの『ミルキー・レモン』が好きだったわよね。今でも好きなの?」
「あ、今は『コマッタちゃん』が好きで…」
コマッタちゃん?
そんなアニメがあるのだろうか。響歌は黙って成り行きを見ていたみんなに声をかける。
「コマッタちゃんっていうのがあるの?」
響歌の質問に答えたのは華世だった。
「それも『ミルキー・レモン』と同じ系統だったはずよ。小さい女の子が魔法で変身して戦うっていうのだったわ」
確かに同じ系統みたいね。
「ふ~ん、まだそういうのが好きなんだ。ところで実際の彼女はできたの?」
「あ、それはまだで…」
「そうかぁ、頑張らないといけないね」
サトルと和やかに話していると、橋本に邪魔をされた。
「おい、虐めるな。困っているだろ」
虐めだなんて、なんて失礼な。私は久し振りに会った級友と雑談を楽しんでいただけなのに!
その頃、黒崎は幹事グループのところにいた。それでもしばらくした後、駐車場の方に歩いていった。
もしかして帰るつもりなのだろうか。まぁ、それならそれで黒崎君らしいけど。そういえば高尾君とヌラもいない。もう帰ったのだろうか。橋本君はずっとさっちゃんの傍にいるし…男子は男子で集まるのかと思っていたけど、そうでも無いみたい。
30分くらい外にいたが、なかなか決まらなかったので、響歌達は自分達だけでカラオケに行くことにした。裏手にある駐車場でどういった乗り合わせで行くか決める。華世とこずえが車でここまで来ていたので二手に別れることになった。華世の車には、響歌、舞、歩。こずえの車には、亜希、紗智、橋本が乗り込む。
カラオケ店に向けて出発しようとした時、響歌のところに黒崎から電話が入った。華世に出発するのを待ってもらい、電話に出た。
「今、駐車場にいるけど、これからみんなどうするの?」
「あ~、なんかね、なかなか決まらなかったから別々で行動することにしたんだ。私らはこれからカラオケに行くことになった」
「じゃあ、オレも入れて」
「ちょっと、待っていて」
響歌はスマホから顔を外すと、車の中にいた3人に訊いてみる。
「黒崎君もメンバーに入っていい?」
3人からはすぐにOKが出たので、黒崎もカラオケに行くことになった。
「うん、いいよ。あっ、今乗っているのって、シーマだよね!」
突然シーマのことを思い出す響歌。
「うん、そうだよ」
「じゃあ、乗せてってよ!」
「いいよ」
黒崎の了解を得たので、響歌は黒崎と一緒に行くことになった。
黒崎は表側の駐車場に停めたらしい。外で待つのは寒いだろうということで、黒崎が現れるまで華世の車の中で待つことにした。
だが、黒崎がなかなか現れない。
「あれ、遅いね」
「どうしたんだろう?」
「響ちゃん、電話してみたら?」
みんなに言われたので、黒崎に電話をしてみる。
「もしもし」
どこにいるの?そう訊こうとしたら…
「どこにいるの?」
逆に訊かれてしまった。
「えぇっ、だから店の裏手側の駐車場だって」
「行ってみたけど、いなかった。電話もかけたんだけどな」
…え?
「そうなの、ごめん。じゃあ、店の表側に行くから」
響歌はそう言って電話を切った。すぐに着信履歴を見てみると、確かに黒崎からのものがあった。
おかしいな、ずっと手に持っていたのに。
「車の中にいたからわからなかったみたい。急いで店の前に行ってくる」
車から降りようとした響歌を、華世が止める。
「ちょっと待って。出会えなかったら困るし、私と通話状態にしておこう。黒崎君と出会えたら私達も出発するわ」
「わかった。ありがとう」
響歌はお礼を言うと、華世と通話中にして車から降りた。
外に出ると、冷たい風が身体を突き刺した。
うわ~、やっぱり寒いわ~。
そんなことを思いながら急いで店の前まで戻った。そこにはもうみんなの姿は無かった。それぞれどこかに向かったのだろう。
いや、まだサトルが残っていた。店の前の道を行ったり来たりしている。その姿は異様だった。
まぁ、サトルは学生の頃からこんな感じだったけどね。
それにしても何をしているんだろう。帰らないのだろうか?
「なんかサトルが、キョロキョロしながら店の前にいる」
「ちょっと、そんなの連れてこないでよね」
サトルのことを報告すると、華世に嫌そうに言われてしまった。
「わかっているって」
そんな話をしていると、店の向かいに黒い車が停まった。店から離れて近づいてみると、運転席に黒崎の姿が見えた。黒崎に合図をして助手席側にまわりこんだ。
「合流できた。ありがとう」
響歌は華世との電話を切ると、黒崎の車に乗り込んだ。
「あいつ、何やっているんだ」
黒崎が怪訝そうに窓の外を見ている。どうやらサトルのことを言っているらしい。
「さぁ?」
本当に何をしているのかわからなかったので一言で済ませた。さすがにもうサトルに構ってはいられない。
同窓会の時はテンションマックス状態だった黒崎も、車の中では素に戻っていた。
響歌は黒崎が無理していたというのもわかっていたので、労りの言葉をかける。
「ご苦労様だったね」
これだけで黒崎も響歌の言いたいことがわかったらしい。
「みんなダメだわ。もっとグループで固まらずにいかないと」
やっぱり…そんなことを思っていたか。
誰かが写真を撮る時も、最初はそのグループだけで撮ろうとしていたもんね。
それを黒崎君が見つけて、みんなに声をかけて全体写真を撮ることになったのよ。しかも高尾君はなかなか入ろうとしなかったしねぇ。
そういえばこの後、黒崎君は高尾君と約束していなかったのだろうか。確か黒崎君が同窓会に高尾君を誘ったはずなんだけど。
「高尾君とは会わなくていいの?」
「あいつ、いつの間にか帰ったんだよ」
あらら、そうだったんだ。
もしかして実家じゃなくて県外にある家の方に帰ったのかしらね。高尾君はもう独り身ではないもの。むしろ県外で、しかも家庭持ちなのに、よく参加してくれたとさえ思ってしまうわ。
やっぱり黒崎君がしつこかったからなのだろうか?
「オレさぁ、みんなの間を行き来したりして彼氏持ちなのかどうか訊いていたんだよ。そしたらみんな、ほとんど彼氏がいるの。幸せそうで羨ましい!」
…まだ言い足りないのか。
「オレらもつき合うか!」
しかもまたそんなことを叫んでいるし!
響歌はもう突っ込む気力が沸いてこなかった。
そもそも響歌からしたら、一次会の時からこういった話題は触れないでいて欲しかったのだ。
久し振りに集まった場で、何が哀しくて独り身をアピールしないといけないのよ。今日くらいは、恋愛とかそういったことは触れずに過去に浸りたいのよ、私は。
黒崎君が嘆くのは勝手にしてくれていいけど、それに私を巻き込もうとしないで欲しいわ。
響歌にはそういった思いがあったので、そこには触れずにさりげなく話題を変えたのだった。
待っている間、話せなかった違うグループの人達とも話していた。高校時代に隠れて先生とつき合っていた人が、卒業後に先生と結婚して子供ができたらしい。その子供の写真とかも見せてもらっていたりしていた。その時、サトルの姿を発見。近くにいたので声をかけてみた。
「サトルじゃない。元気にしているの?」
「あっ、う、うん」
「仕事はどう。まだ続いているの?」
「うん」
「そういえばサトルって、魔法少女アニメの『ミルキー・レモン』が好きだったわよね。今でも好きなの?」
「あ、今は『コマッタちゃん』が好きで…」
コマッタちゃん?
そんなアニメがあるのだろうか。響歌は黙って成り行きを見ていたみんなに声をかける。
「コマッタちゃんっていうのがあるの?」
響歌の質問に答えたのは華世だった。
「それも『ミルキー・レモン』と同じ系統だったはずよ。小さい女の子が魔法で変身して戦うっていうのだったわ」
確かに同じ系統みたいね。
「ふ~ん、まだそういうのが好きなんだ。ところで実際の彼女はできたの?」
「あ、それはまだで…」
「そうかぁ、頑張らないといけないね」
サトルと和やかに話していると、橋本に邪魔をされた。
「おい、虐めるな。困っているだろ」
虐めだなんて、なんて失礼な。私は久し振りに会った級友と雑談を楽しんでいただけなのに!
その頃、黒崎は幹事グループのところにいた。それでもしばらくした後、駐車場の方に歩いていった。
もしかして帰るつもりなのだろうか。まぁ、それならそれで黒崎君らしいけど。そういえば高尾君とヌラもいない。もう帰ったのだろうか。橋本君はずっとさっちゃんの傍にいるし…男子は男子で集まるのかと思っていたけど、そうでも無いみたい。
30分くらい外にいたが、なかなか決まらなかったので、響歌達は自分達だけでカラオケに行くことにした。裏手にある駐車場でどういった乗り合わせで行くか決める。華世とこずえが車でここまで来ていたので二手に別れることになった。華世の車には、響歌、舞、歩。こずえの車には、亜希、紗智、橋本が乗り込む。
カラオケ店に向けて出発しようとした時、響歌のところに黒崎から電話が入った。華世に出発するのを待ってもらい、電話に出た。
「今、駐車場にいるけど、これからみんなどうするの?」
「あ~、なんかね、なかなか決まらなかったから別々で行動することにしたんだ。私らはこれからカラオケに行くことになった」
「じゃあ、オレも入れて」
「ちょっと、待っていて」
響歌はスマホから顔を外すと、車の中にいた3人に訊いてみる。
「黒崎君もメンバーに入っていい?」
3人からはすぐにOKが出たので、黒崎もカラオケに行くことになった。
「うん、いいよ。あっ、今乗っているのって、シーマだよね!」
突然シーマのことを思い出す響歌。
「うん、そうだよ」
「じゃあ、乗せてってよ!」
「いいよ」
黒崎の了解を得たので、響歌は黒崎と一緒に行くことになった。
黒崎は表側の駐車場に停めたらしい。外で待つのは寒いだろうということで、黒崎が現れるまで華世の車の中で待つことにした。
だが、黒崎がなかなか現れない。
「あれ、遅いね」
「どうしたんだろう?」
「響ちゃん、電話してみたら?」
みんなに言われたので、黒崎に電話をしてみる。
「もしもし」
どこにいるの?そう訊こうとしたら…
「どこにいるの?」
逆に訊かれてしまった。
「えぇっ、だから店の裏手側の駐車場だって」
「行ってみたけど、いなかった。電話もかけたんだけどな」
…え?
「そうなの、ごめん。じゃあ、店の表側に行くから」
響歌はそう言って電話を切った。すぐに着信履歴を見てみると、確かに黒崎からのものがあった。
おかしいな、ずっと手に持っていたのに。
「車の中にいたからわからなかったみたい。急いで店の前に行ってくる」
車から降りようとした響歌を、華世が止める。
「ちょっと待って。出会えなかったら困るし、私と通話状態にしておこう。黒崎君と出会えたら私達も出発するわ」
「わかった。ありがとう」
響歌はお礼を言うと、華世と通話中にして車から降りた。
外に出ると、冷たい風が身体を突き刺した。
うわ~、やっぱり寒いわ~。
そんなことを思いながら急いで店の前まで戻った。そこにはもうみんなの姿は無かった。それぞれどこかに向かったのだろう。
いや、まだサトルが残っていた。店の前の道を行ったり来たりしている。その姿は異様だった。
まぁ、サトルは学生の頃からこんな感じだったけどね。
それにしても何をしているんだろう。帰らないのだろうか?
「なんかサトルが、キョロキョロしながら店の前にいる」
「ちょっと、そんなの連れてこないでよね」
サトルのことを報告すると、華世に嫌そうに言われてしまった。
「わかっているって」
そんな話をしていると、店の向かいに黒い車が停まった。店から離れて近づいてみると、運転席に黒崎の姿が見えた。黒崎に合図をして助手席側にまわりこんだ。
「合流できた。ありがとう」
響歌は華世との電話を切ると、黒崎の車に乗り込んだ。
「あいつ、何やっているんだ」
黒崎が怪訝そうに窓の外を見ている。どうやらサトルのことを言っているらしい。
「さぁ?」
本当に何をしているのかわからなかったので一言で済ませた。さすがにもうサトルに構ってはいられない。
同窓会の時はテンションマックス状態だった黒崎も、車の中では素に戻っていた。
響歌は黒崎が無理していたというのもわかっていたので、労りの言葉をかける。
「ご苦労様だったね」
これだけで黒崎も響歌の言いたいことがわかったらしい。
「みんなダメだわ。もっとグループで固まらずにいかないと」
やっぱり…そんなことを思っていたか。
誰かが写真を撮る時も、最初はそのグループだけで撮ろうとしていたもんね。
それを黒崎君が見つけて、みんなに声をかけて全体写真を撮ることになったのよ。しかも高尾君はなかなか入ろうとしなかったしねぇ。
そういえばこの後、黒崎君は高尾君と約束していなかったのだろうか。確か黒崎君が同窓会に高尾君を誘ったはずなんだけど。
「高尾君とは会わなくていいの?」
「あいつ、いつの間にか帰ったんだよ」
あらら、そうだったんだ。
もしかして実家じゃなくて県外にある家の方に帰ったのかしらね。高尾君はもう独り身ではないもの。むしろ県外で、しかも家庭持ちなのに、よく参加してくれたとさえ思ってしまうわ。
やっぱり黒崎君がしつこかったからなのだろうか?
「オレさぁ、みんなの間を行き来したりして彼氏持ちなのかどうか訊いていたんだよ。そしたらみんな、ほとんど彼氏がいるの。幸せそうで羨ましい!」
…まだ言い足りないのか。
「オレらもつき合うか!」
しかもまたそんなことを叫んでいるし!
響歌はもう突っ込む気力が沸いてこなかった。
そもそも響歌からしたら、一次会の時からこういった話題は触れないでいて欲しかったのだ。
久し振りに集まった場で、何が哀しくて独り身をアピールしないといけないのよ。今日くらいは、恋愛とかそういったことは触れずに過去に浸りたいのよ、私は。
黒崎君が嘆くのは勝手にしてくれていいけど、それに私を巻き込もうとしないで欲しいわ。
響歌にはそういった思いがあったので、そこには触れずにさりげなく話題を変えたのだった。