少女達の青春群像     ~途切れなかった絆~

ケリはきちんとつけましょう

 色々あった今年も、あと数分で終わろうとしている。

 響歌は中学の時の友人3人とテーマパークに来ていた。そこでカウントダウンをするのだ。

 中学の友人とはいっても、2人は響歌のように地元を離れて同じ街に暮らしている。地元にいるのは1人だけだ。

 その1人はあきほで、早朝に地元を出発して昼頃に着いた。響歌とあきほは昼に待ち合わせをしていた。

 あとの2人は午後7時に待ち合わせをしていた。その1人は由美で、もう1人は由美と同じ地元の高校に進んだ氷川花梨(ひかわかりん)だった。響歌とは保育園の頃から一緒だが、仲良くなったのはクラスが離れた中学の時からだ。花梨が響歌を一緒のクラブに誘ったことがきっかけで、そこから2人の関係が続いている。

 響歌はあきほと一緒に街で遊んでから、2人と合流してテーマパークでも遊んだ。カウントダウンをした後も、そのままテーマパークで遊ぶつもりだ。

 周囲では、カウントダウンパレードが始まっているのもあって一層賑やかだ。その中で、響歌は幸田に電話をかけた。何故、こんな場所でわざわざ幸田に電話をしたのかというと、前日の幸田との電話の時に『羨ましいだろ』コールをすると約束していたからだ。

「何、やっているの」

 幸田は電話に出るなり、そんなことを言った。

「どう、幸田君達の方は楽しんでいる?私の方はもちろん楽しんでいるけど!」

「声を聞いたらわかります。でも、オレの方もまぁまぁ楽しんでいるから」

 幸田は自分の家でカウントダウンを過ごしてはいない。友達の家に10人くらいで集まり年越し麻雀をしているのだ。そこには黒崎もいるし、歩の彼氏である田村もいた。その他の面々も、ほとんど響歌が知っている面子だ。

「あっ、イベントが始まるみたい。じゃあ、麻雀を楽しんでいてね。私は私で思いっきり楽しんでいるから!」

 特に用事も無かったので、あっさり電話を切る。

「幸田君達も楽しんでいるって?」

 早速、響歌に訊いてきたのは、あの面々を知っているあきほだった。

「幸田君としか話していないけど、後ろが結構騒がしかったから、彼らなりに楽しんでいるみたい」

「へぇ、そうなんだ。でも、なんだか懐かしいな。最近はみんなで会っていないもんね」

 そんな話をしていると、2人の前にいた由美が後ろを振り返った。

「もうすぐ始まるよ」

 その言葉と同時にカウントダウンが始まる。

 10、9、8、7…

 響歌達も周囲の人達と一緒にカウントダウンをする。

『3、2、1、ハッピーニューイヤー!』

 その声と共に歓声が上がり、大量の花火も打ち上げられた。

 大音量の音楽に乗ってテーマパークのキャラクター達が踊りまくる。どこからか紙吹雪も舞ってきた。

 真冬の外だけど、この時だけは寒さも吹き飛んでいた。みんなと一緒に新年を祝った。

 カウントダウンをした後も4時頃まではテーマパークにいたけど、さすがにこれ以上は寒くて無理ということで解散になった。

 それでもあきほだけは響歌と一緒に彼女の家に向かった。このまま帰るのはさすがに辛いということで仮眠を取ってから響歌と一緒に帰るのだ。由美も今日地元に帰るので、3人で帰る予定だった。

 だが、約束の10時に由美のスマホに何度電話をかけても出なかった。多分、爆睡しているのだろう。その時は先に帰っていいと言われていたので、響歌とあきほは2人で帰った。

 実家に着いたのは午後3時だった。そこから昼御飯を食べて気楽な恰好に着替える。仮眠したとはいえ、さすがに眠かったのでこれから寝るのだ。

 それでも寝る前に、みんなにお年賀メッセージを送ろう。そう思いつき、一斉送信をする。その後は睡眠の邪魔にならないよう、一旦スマホの電源を切るつもりだった。

 だが、その寸前、響歌のスマホが鳴った。スマホには黒崎の名が表示されている。彼にも送信したからその返事だろう。そう思い、電話に出た。

「はーい、黒崎君、どうしたの?」

 一応用件を訊いてみると、彼は意外なことを口にした。

「ねぇ、今からオレの家で、飲みながらテレビでも見ない?」

 挨拶も、さっきのメッセージのことでもなく、いきなり誘われてしまった。

 今から…ねぇ。どうしよう?

 少しだけ迷ったが、断ることはしなかった。

「うん、いいよ。あっ、でも、今から用意をするから行くのはちょっと遅くなるけど、いい?」

「もちろんいいよ。じゃあ、家で待っているから」

 突然用事が入ってしまった。もう布団の中に入っていたが、受けたからには用意をしなくてはいけない。響歌は慌てて布団から出ると、親が呆れる中、急いでシャワーをして出かける用意をした。黒崎を待たせているので早くしなければならない。

 それでも車に乗り込むと、すぐには出発せずに亜希に電話をした。

「亜希ちゃーん、ハッピーニューイヤー。メッセージは届いた?」

「あっ、響ちゃん、あけましておめでとう。メッセージありがとね。今、返信しようと思っていたところだったのよ。そういえばテーマパークでカウントダウンしてきたんでしょ。どうだった、楽しかった?」

「寒かったけど、楽しかったよー。亜希ちゃんもまた一緒に行こうね」

「もちろん、そっちに行った時は案内してよ。あっ、じゃあ、響ちゃんって、今年の正月は地元に帰ってこないの?」

「えっ、帰ってきたよ。今は実家。10時頃、地元の友達の車に乗せてもらって帰ってきたんだ。楽しかったけど、ほとんど眠っていないから結構辛いのよね」

「じゃあ、この電話が終わったら速攻で寝た方がいいよ。響ちゃんは遊びが大事っぽいけど、睡眠も大事なんだから」

 何よりも睡眠第一の亜希らしい言葉だった。

 本当なら響歌もそうしたいところだ。いや、さっきまではそうするつもりだった。

「そうなんだけど、さっき黒崎君から誘われちゃって」

「えっ、もしかして行くの?」

「うん、なんか家で飲みながらテレビでも見ようって誘われたから」

「今から黒崎君の家に行くんだ」

「実はもう出発しないといけないんだよね。これでも誘われてから1時間は経っているから」

「あんた達ってさぁ、いったいどういった関係なのよ」

 スマホから聞こえてくる亜希の声は疲れた感じだった。

「どういったって…なんなんだろうね?」

 実は響歌にもよくわからなかった。

 誘われたから、つい受けてしまった。

 だが、あんな感じで誘われたことが無かったので変な感じもしたのだ。だから彼の家に行く前に、彼とのことを知っている人と話がしたかった。そういった理由で亜希に電話をした。果たして自分のこの判断は間違っているのだろうか…と。

「まぁ、いいんじゃないの。なるようにしかならないわよ。断ってもいいとは思うけどね」

「でも、受けてしまったからなぁ、取り敢えず行くだけ行ってみる。今夜から大雪になるらしいから、顔を出す程度だよ」

 そんなことを話して、亜希との電話は終わった。
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