少女達の青春群像 ~途切れなかった絆~
また会おうね、舞
あれから数十年の月日が流れた。
桜の季節も終わろうとしていて、あたりは新緑に覆われている。この時期は過ごし易かったはずなのに、今では花粉に悩まされたり、夏のような気温にぐったりする日もあった。
響歌ももう40歳を過ぎていた。その間、色々なことがあった。高校時代の友達はほとんど結婚をして、子供もいる。
その中で、紗智だけが独身のままだった。彼女は26歳の時に橋本と別れてからそのままフリーを通している。
高校時代といえば、あの臭いのお陰で真っ先に思い出す小森はどこかの校長にまでなっていたが、その数年後に癌で亡くなってしまった。
4組の担任だった渕山は、46歳の時にパソコン教室で教えていた生徒と結婚をして響歌の地元で幸せに暮らしている。
「色々なことがあったけど…やっぱり私が最も驚いたことは、あんたが私らの中で一番早く逝ってしまったことだよね」
響歌は目の前にある墓を見つめながら、鞄の中から1冊の本を取り出した。それを墓の前にそっと置く。
「これ、ようやく完成したよ。途中まで書いていたのに、ずっと止めていてごめん。あんなに楽しみにしていてくれていたのにね」
結末をどうしようか悩み、何十年も止めたままにしていた。
それでも虫の知らせだったのだろうか。彼女が亡くなる1カ月前、急にこの作品の存在を思い出した。
闘病生活を送る彼女の為に、最後まで書いた方がいいのかもしれないとも思った。
それでも結局、その時は書けなかった。
これまで色々なことがあった。良いこともあれば、嫌なことも。それでももう、それらはすべて過去になっている。今更掘り起こすのもどうかといった思いが響歌の筆を止めていた。
そうこうしているうちに彼女が亡くなってしまった。
その時は最後まで書かなかったのを後悔したが、やはりその後も1カ月は書けずにいた。
闘病生活のことをあまり知らなかったし、最期の瞬間にも立ち会っていない。
だからだろうか、彼女が死んだことを未だに実感できなかったのだ。
それでも気持ちを振り起こして書き始めた。
彼女が生きた証を残しておきたいと思って…
それからは早かった。高校2年の最初で止まっていた物語を、1カ月で最後まで完成させた。
それが、この『少女達の青春群像』だ。
文章は三人称になっていて、それぞれの視点から書かれてあるが、この物語の第1部は舞が主人公だ。それを表すように副題が『舞、その愛』となっている。
少しダサい題名だが、敢えてこの題をつけた。
この題名は、実は響歌が考えたものではない
高校の頃、図書室にその題の本があるのを、響歌は舞と一緒に見つけたのだ。
その時は2人で大笑いしてしまった。
響歌は面白半分で、その題を付けた漫画を授業中に書いたこともあった。
そしてそれを小説にもしたいと思い、これを書いたのだ。
まさかそれがこんなに長くなるとは、書き始めた当時は思わなかったのだが…
しかもその本には続編まであった。だから本来なら、響歌編になっている第2部の方にはそれを使わなければならないのかもしれない。
だが、それでもその題はさすがに使う気にはなれなかった。
何故ならその本の題名は『舞、その死』だったのだから…
桜の季節も終わろうとしていて、あたりは新緑に覆われている。この時期は過ごし易かったはずなのに、今では花粉に悩まされたり、夏のような気温にぐったりする日もあった。
響歌ももう40歳を過ぎていた。その間、色々なことがあった。高校時代の友達はほとんど結婚をして、子供もいる。
その中で、紗智だけが独身のままだった。彼女は26歳の時に橋本と別れてからそのままフリーを通している。
高校時代といえば、あの臭いのお陰で真っ先に思い出す小森はどこかの校長にまでなっていたが、その数年後に癌で亡くなってしまった。
4組の担任だった渕山は、46歳の時にパソコン教室で教えていた生徒と結婚をして響歌の地元で幸せに暮らしている。
「色々なことがあったけど…やっぱり私が最も驚いたことは、あんたが私らの中で一番早く逝ってしまったことだよね」
響歌は目の前にある墓を見つめながら、鞄の中から1冊の本を取り出した。それを墓の前にそっと置く。
「これ、ようやく完成したよ。途中まで書いていたのに、ずっと止めていてごめん。あんなに楽しみにしていてくれていたのにね」
結末をどうしようか悩み、何十年も止めたままにしていた。
それでも虫の知らせだったのだろうか。彼女が亡くなる1カ月前、急にこの作品の存在を思い出した。
闘病生活を送る彼女の為に、最後まで書いた方がいいのかもしれないとも思った。
それでも結局、その時は書けなかった。
これまで色々なことがあった。良いこともあれば、嫌なことも。それでももう、それらはすべて過去になっている。今更掘り起こすのもどうかといった思いが響歌の筆を止めていた。
そうこうしているうちに彼女が亡くなってしまった。
その時は最後まで書かなかったのを後悔したが、やはりその後も1カ月は書けずにいた。
闘病生活のことをあまり知らなかったし、最期の瞬間にも立ち会っていない。
だからだろうか、彼女が死んだことを未だに実感できなかったのだ。
それでも気持ちを振り起こして書き始めた。
彼女が生きた証を残しておきたいと思って…
それからは早かった。高校2年の最初で止まっていた物語を、1カ月で最後まで完成させた。
それが、この『少女達の青春群像』だ。
文章は三人称になっていて、それぞれの視点から書かれてあるが、この物語の第1部は舞が主人公だ。それを表すように副題が『舞、その愛』となっている。
少しダサい題名だが、敢えてこの題をつけた。
この題名は、実は響歌が考えたものではない
高校の頃、図書室にその題の本があるのを、響歌は舞と一緒に見つけたのだ。
その時は2人で大笑いしてしまった。
響歌は面白半分で、その題を付けた漫画を授業中に書いたこともあった。
そしてそれを小説にもしたいと思い、これを書いたのだ。
まさかそれがこんなに長くなるとは、書き始めた当時は思わなかったのだが…
しかもその本には続編まであった。だから本来なら、響歌編になっている第2部の方にはそれを使わなければならないのかもしれない。
だが、それでもその題はさすがに使う気にはなれなかった。
何故ならその本の題名は『舞、その死』だったのだから…