少女達の青春群像     ~途切れなかった絆~
 響歌の友達の今井舞は1年前に死んでしまった。舌癌だった。

 約2年半の闘病生活だった。声は失うだろうが、まさか死んでしまうとは思わなかった。2年半の闘病生活の中、響歌は1度しか見舞いに行けなかった。

 舞が病気のことを知らせてくれたのは1回目の手術の前だった。メッセージで癌になったことを報告されたので、すぐに舞に電話をした。

 その時の舞は凄くハイテンションで、癌の治療方法で家族が揉めているようなことを話していた。今から思えば、あの時は精神が不安定になっていてあんなにハイテンションになっていたのだろう。

 舌を切断するかどうかで迷っていたが、結局は切断する方を選択。その為に地元の病院から都会にある大学病院に移ったという。

 不安になっているはずなのに、住み慣れたところから離れた病院にいる舞。しかもそこには知り合いがほとんどいない。身内が見舞いに来るのも一苦労だ。

 それでも響歌の家からだと、そこは1時間しか離れていなかった。

 響歌の中に、見舞いに行かないという選択肢は一欠片も無かった。


 久しぶりに見た舞はやせ細っていた。抗癌剤の影響で髪の毛も抜けてきているようで毛糸の帽子を被っていた。それでも久し振りの友人との対面にとても喜んでくれた。

 状況を訊いてみると、舌は一部切断するが、太腿の肉をそこに移植するのでまだ声は出せるだろうということらしい。

 その数日後、舞は無事に手術を終えた。

 そのはずだった。

 だが、それから次々と癌が転移していった。手術して取り除いても、また新たなところからひょっこりと現れる。まだ若かったので進行も早かった。

 だからだろうか2年くらい経った時、舞がインターネット上にみんなに向けて遺書のような投稿をしていた。2年前に癌になり、今も闘病生活を送っているということ、てんかんにもなったということ、そして…

「もう、私も疲れたのです」

 といった、一言。

 響歌がこの投稿に気づいたのは、舞が投稿してから1週間くらい経った時だった。

 そのコメント欄には、舞の友達から泣き顔の絵文字とか、励ましの言葉があった。それでもその中には、高校時代の友人達の名前は無かった。

 みんなはこの投稿に気づいていないのだろうか?

 それとも気づいたものの、どうコメントしていいのかわからず放置しているとか?

 響歌もすぐにはコメントができなかった。1日考えた後、もう1度、舞の投稿を見ようとした。

 するとなんと舞の投稿が消えていたのだ。

 もしかしたら思い切って投稿したものの、後悔して消したのかもしれない。

 それか、最初からしばらくしたら消すつもりだったのかもしれない。

 真相はわからないが、見た以上は何か返さなければいけない。彼女は私達に何かを訴えている。

 響歌は考えに考えた末、舞個人のメッセージに返信した。

 舞からもメッセージが返ってきたが、これが彼女との最後のやり取りになってしまった。
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