少女達の青春群像     ~途切れなかった絆~
 同窓会の日ら2日経過したが、響歌はまだ実家にいた。

 それでも明日には戻らなくてはいけない。

 母親と買い物から帰ると、すぐにポストを確認する。自分宛のものはもうほとんど無いが、実家にいる時は今でもこうして帰宅後に確認していた。

 郵便物やチラシに交じって年賀状も何枚かある。親が年賀状を出した人から返事がきているのだろう。自分宛は無いはずだ。高校の頃から新年の挨拶はほとんどデータでしているのだから。そう思い、気楽にチェックをしていた。

 その時、響歌の動きが止まった。その手にあるのは一通の年賀状。

 まさか…でも、間違いないよね。

 恐る恐る裏を見てみると、あっさりとした今年の干支が印刷してある。それだけではなくて文字も書いてあった。

「何、これ」

 慌ててその年賀状だけ隠すように持つと、他の郵便物をリビングのテーブルに置いて自分の部屋に駆け込んだ。

 今更なんなのよ。

 年賀状の差出人は、同窓会でちらっと姿を見かけた橋本だった。住所は県外。修学旅行で立ち寄った場所の近くだ。住所に寮という文字が入っているので、今は大学で寮生活をしているのだろう。

 今回の年賀状は、以前のように響歌の宛名を間違えてはいなかった。

 実は高校1年の時、響歌は舞と一緒に年賀状を橋本、それに川崎と中葉に送ったことがあった。その時は自分達の名は伏せてとてもバカバカしい内容のものを裏に書いていたのだが、橋本はすぐに響歌達だと見破り、響歌に年賀状を返してくれた。それでもその住所には町という文字が抜けていたし、響歌の名前も漢字を間違えていたのだが…

 ちなみに川崎も年賀状を響歌に返してくれていた。中葉は既に年賀状を自ら送っていたのでそれに対するものは無かったが、後から聞くとすぐに響歌と舞がしたことだとわかったらしい。名を伏せていたにも関わらず、3人共にすぐに見破られたというわけだ。

 話が少し脱線したが、橋本からの年賀状に書かれていたのは、あの時の謝罪。1月の中旬まで実家にいるということ。
 
 そして『会いたい』という言葉だった。

 大学は随分と長い間お休みのようで。生憎、私のところは明後日から学校が始まるのよね。

 連絡が欲しいようなことが書いてあったが、響歌が実家にいるのは今日まで。明日はここから電車で3時間離れた場所に戻らないといけない。

 会いたいって…社交辞令では無さそうね。年賀状ではよくある文面だけど、その後に『マジでな!』と続いているし、謝罪のところも『本当は会って謝りたかった』なんて書いてあるから。

 それでもさすがに地元で会うことはできない。今日は既に夕方になっているし、明日は午前中に帰ることにしている。

 終わったはず…なんだけどなぁ。

 響歌は溜息を吐くと、机の奥の方から高校の時に使っていたレターセットを取り出した。中を確認してみると2、3枚残っている。

 鞄からスマホを出し、レターセットの横に置く。しばらくスマホとレターセットを眺めていたが、スマホの方を横に避けてペンを持った。
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