【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
◇時給1,200円の雇われ姫
「ごちそうさまでした!」
4限目終了のチャイムが鳴ってから、わずか5分。
特大おにぎり2つをぺろりと完食した私、水瀬 瑠佳は蛍光ペン片手に求人誌へとかじりつく。
「ここは時給970円。こっちは時給高めだけど土日祝日、全部入らなきゃだめか……」
求人誌を読むのは教科書を読むよりも得意だ。
募集内容を見ながら好条件のものには丸をつける。
ちなみに私にとっての好条件とは高収入であること。
シフトに融通が聞けば尚良。
「瑠佳ちゃんまたバイト始めるの?」
そう問いかけてきたのは、前の席で顔よりも大きいサイズのメロンパンを頬張る|小川 新那。
見た目も中身も可愛い私の親友だ。
首を傾げる仕草と同時に揺れたミルクティー色の髪には、今日も綺麗にウェーブがかかっている。
「居酒屋の方が来月閉店するの。だから、早急に代わりのバイトを見つけたくて」
わざわざ“居酒屋の方”と説明したのは、他にスーパーのバイトも掛け持ちしているからだ。