【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


冷えた頬に伝う熱いものを感じて、数秒前に新那が取った行動を真似する。

パシャンと水の跳ねる音に混じり、新那の悲鳴に似た叫び声が聞こえた。


「る、瑠佳ちゃん!!」

ひどく冷たい海水は一瞬にして私の涙をさらっていった。



「つっめた!よく我慢したね!?」


涙は止まった。でも、今度は震えが止まらない。


「……正直、後悔はしてる」

そう口にした新那も同じく小刻みに震えていた。


「ふっ……あははは。何やってんの私たち」

「本当だね」

「新那がエモいとか言い出して、過去の話を始めるからでしょ」

「ち、違うよ!私は空中庭園に言っても同じ話をしてたよ。きちんと謝りたかったから」

もし、海ではなく空中庭園へと向かっていたら私たちは憩いの場で涙を流していたのだろうか。

それとも、周りの目を気にして話をやめてた?


考えてもわからないや。


だけど、今日ここへ来られて良かった。

あとでもう一度、怜央にお礼を言わないと。






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