【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。




「そうはいかねぇんだよ。俺が姫をつくらないせいで、櫻子(さくらこ)……俺の一番近くにいる幼なじみが狙われてる」

その言葉を口にした瞬間、蓮見怜央は強く拳を握りしめた。


「つまり、蓮見くんはその櫻子さんを危険な目にあわせたくないってこと?」

「ああ。櫻子は心臓に病気を抱えていて、夏に手術を控えてるんだ。医者が言うには日常生活に問題はないらしい。だけど、激しい運動や心臓に負担がかかることは禁止されてる」

心臓に負担がかかること……。

「……やっとわかったよ。蓮見くんが姫を探してる理由」

彼はその櫻子さんっていう幼なじみを護りたいんだ。

お金を渡して、身代わりを用意してでも。


「姫を探してる理由はわかったけど、どうして私なの?」

身近にいる子のほうが話は早そうなのに。



「さっきも話したとおり姫は狙われやすい。だから、自分の身は自分で守れる奴のほうが有り難い。お前この前、学校に侵入した不審者を捕まえたんだろ?」

「よく知ってるね?」

今からちょうど2週間前。

女子更衣室から出てきたのは見るからに怪しげな男。

< 11 / 260 >

この作品をシェア

pagetop