【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「そうはいかねぇんだよ。俺が姫をつくらないせいで、櫻子……俺の一番近くにいる幼なじみが狙われてる」
その言葉を口にした瞬間、蓮見怜央は強く拳を握りしめた。
「つまり、蓮見くんはその櫻子さんを危険な目にあわせたくないってこと?」
「ああ。櫻子は心臓に病気を抱えていて、夏に手術を控えてるんだ。医者が言うには日常生活に問題はないらしい。だけど、激しい運動や心臓に負担がかかることは禁止されてる」
心臓に負担がかかること……。
「……やっとわかったよ。蓮見くんが姫を探してる理由」
彼はその櫻子さんっていう幼なじみを護りたいんだ。
お金を渡して、身代わりを用意してでも。
「姫を探してる理由はわかったけど、どうして私なの?」
身近にいる子のほうが話は早そうなのに。
「さっきも話したとおり姫は狙われやすい。だから、自分の身は自分で守れる奴のほうが有り難い。お前この前、学校に侵入した不審者を捕まえたんだろ?」
「よく知ってるね?」
今からちょうど2週間前。
女子更衣室から出てきたのは見るからに怪しげな男。