【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「小川がまだバイトに反対してるって知って、俺が話せば口を出さなくなるんじゃないかと思ったんだよ。……そしたら瑠佳が楽になるって」
私が楽になる……?
たったそれだけのために怜央は、憎まれ役を買ってでたってこと?
「それって私のため……に?」
「瑠佳は続けたそうに見えたからな。でも、半分は俺のため」
「あ、あぁ!姫が突然いなくなったら櫻子さんが危ないもんね」
「それもあるけど、今さら新しい姫を探す気もねぇからな。もう瑠佳以外は考えらんねー」
怜央の言葉に他意がないことくらいわかっているけれど、替えの利かない存在だと思われていることが素直に嬉しかった。
たとえ、それがただの雇われの姫としてでも。
「だけど、俺のやり方は間違ってた。ただ黙らせりゃいいって思ってたけど、それじゃあ瑠佳は喜ばねぇよな」
足元に落ちていた石を手に取り、それを階段の下へと向かって放り投げた怜央。
私はその様子を見ながら「…………最低」と口にする。