【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「だから、悪かったって」
「そうじゃなくて。何も気づけなかった私がってこと。怜央を悪者にして、新那にも悲しい思いをさせた」
今回の一件で新那とは今までしてこなかった話ができた。
けれど、私がもっと早く新那と話をしていたら、怜央が憎まれ役を買う必要なんてなかったかもしれない。
また、新那が自分を責めることもなかったかもしれない。
「小川には確かに悪いことした。だけど、瑠佳が最低つーのは違うだろ。瑠佳は優しいから小川に強く言えなかった。ただそれだけで俺がもっと上手くやりゃ良かったんだよ」
「……そんな怜央の優しさにすぐ気づけなかった自分が憎い」
昼間だけじゃない、私は怜央が教室に迎えに来てくれた時も酷い態度を取ってしまった。
怜央がどうしてあんな言い方をしたのか。考える時間なら十分にあったはずなのに。
「憎いってあのな……。話して数日しか経ってない奴のことなんか、そんな簡単にわかんねーよ。んなの当たり前だろ。あと、俺は別に優しくはねぇ」
優しいよ、さっきからずっと。