【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「いたたたたた。何、急に」


「あれ以上、揺らされると脳震盪(のうしんとう)起こすわ。それとも力技で俺の記憶を消しにかかるつもりだったか?」

「そんなわけないでしょ」

体を起こそうとして地面に両手をつくと、真下にいた怜央とバチッと目が合った。

左右に流れた髪のおかげで、いつもは隠れがちな目がよく見える。

綺麗なブラウンの瞳──。


そこに映る私の姿。


ずっと見つめていたら捕らわれて、逃げられなくなる。

彼の瞳からはそんな危険な香りがした。


早く、早く目を逸らさなきゃ。


視線は落ちてあった小石へ。

そして、立ち上がろうと地面についていた手に力を入れるが、怜央がそれを阻止する。


「瑠佳」

普段よりも何倍も優しい声色で私の名前を呼んで。

今、名前を呼ぶのは卑怯だ。


「こっち向けよ」 



怜央の言葉に応えることも、立ち上がることもできない私。


そんな私に対して、怜央はゆっくりと手を伸ばした。



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