【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
彼の長い指は私の髪を掬い、そっと耳へとかける。
次に頬へと移動すると、今度は親指を優しく肌へと滑らせた。
そんな怜央の行動に、私は思わず視線を元へと戻してしまう。
「やっとこっち見た」
「………………っ」
目が合った瞬間、怜央はまるでいたずらが成功した子供のように笑った。
「瑠佳」
「な、なに」
「俺だってお前のことで頭がいっぱいなんだよ」
「………………え?」
“それってどういう意味?”
私がその言葉を口にする前に、怜央が上半身を起こす。
彼の上に跨がったまま動けないのは頬を包む温かな手のせいか、それとも近づいてくる危険な瞳のせいなのか。
もうよくわからなくて、このまま流れに身を任せてしまおうか。なんて思ったその時──。
「おーい、いちゃいちゃする時間やったわけじゃねーからな」
戻って来た真宙くんの声でハッと我に返った。
私はその場で立ち上がると、何事もなかったかのように砂のついた手を払う。