【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
櫻子さんが無事に手術を終えて戻って来たら私の役目は終わる。
そしたら、学校での偽装カップルも終了。
今度は別れた理由を問いただされるんだろうな。また机を囲まれて。
別れた後も仲の良い人たちはいるけれど、私たちの場合は少し事情が違う。
だけど、同級生なんだから会話ぐらいは許される?
それとも、なんの関係もなかった頃に戻り、視線すら合わなくなるのだろうか。
それは少し寂しいけれど、私は怜央の考えに従うつもりだ。
私は雇われの身だから。
ノートのすみっこ。無意識に書いていた怜央のふた文字をぐるぐるとシャーペンで塗りつぶす。
私には、もっと他に考えなければならないことがある。それは次のバイト先を探すこと。
お金と時間があるのは今だけ、今だけなんだから。
そう結論づけたところで、4限目終了のチャイムが鳴った。
「瑠佳ちゃん、今日は教室でいいんだよね?」
後ろから聞こえてきた声に私は「うん」と返事をする。