【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
3日前の席替えで私と新那は前後の席になった。
今までとは違い、後ろを向けばすぐに昼食が食べられる。
時々、怜央から屋上に呼び出されて3人で昼食を食べることもあるけれど、それはまれなことだ。
なぜなら、怜央が全日学校にいることはとても珍しいから。
あれでよく進級できたなと思う。
「瑠佳ちゃん、難しい顔してたけど何か考えごと?」
「あー……、後に始めたバイトが終わったら次は何しよっかなーって」
「最終日って決まってるの?」
「正確な日程はまだだけど、夏休みが終わる頃には私の役目も終わりかな〜」
櫻子さんの手術は夏休み。
その後、術後の経過を見て退院となる。
「そっか……。いい求人を見つけたら報告するね」
「うん。ありがと」
「あ、そうだ。そういえば今日、期間限定のチョコ見つけて買ってきたんだー」
新那はそう言うと食べかけのクリームパンを一旦袋へと戻して、鞄を膝の上に置いた。
その時、目の前で揺れたのは青い毛をした狼のマスコットキーホルダー。
新那は一度、それを怜央へと返却した。
けれど、再び彼女の元へと戻って来たのだ。
今度はその持ち主である真宙くんから直接、手渡されて。