【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「安心しろよ、俺のバイト代から出すから。あ、普通のガソリンスタンドな。金の出処を確認するってことは、引き受けるってことでいいんだよな?」
「バイトを探してたのは事実だし、私に務まるなら頑張り……ます」
「ん、じゃあ明日から頼むわ。瑠佳」
不意打ちで名前を呼ばれたことにより、ドクンと胸が鳴る。
それと同時に顔の温度が急激に上昇。
私はそれを暑さのせいにして、持っていた求人誌を使い風を送った。
この熱を一刻も早く冷ましたくて。
「瑠佳も俺のことは怜央って呼べよ。俺の姫なんだから蓮見くんはおかしいだろ」
これは姫役を求める蓮見怜央と、お金を必要とする私の利害が一致しただけ。
頭では理解している。
けれど、“俺の”なんて言われると、本当に彼の特別になったような気がして、冷ましたはずの顔がまた熱を持ちはじめた。
こんなことでいちいち照れていたら、チョロい女だと思われる。
「ほら、呼んでみろよ」
「れ、れ、れ、怜央」
おかしい。ただ名前を呼ぶだけなのに、なんだか上手くいかない。