【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「そ、そんなの困る」
「あ?」
「だって、」
私を特別扱いしてくれるのは今だけでしょ?
そう口にしかけてやめた。
わかりきった答えを聞く必要なんてないと思ったからだ。
「それじゃあ、私がダメ人間になりそうじゃない?」
代わりにおどけてみせると「なんだそれ」と鼻で笑われる。
「だ、だから!ほどほどにお願いしますって話」
「はいはい」
明らかな空返事。
本当にわかってるのかな?
私を甘やかしたって何の得にもならないんだよ。
私が怜央のそばにずっといたいって言い出したらどうするつもり?
後々、困るのは怜央なんだから。
……私と違って怜央は先のことまで考えていないんだろうな。
「じゃあ、甘えるにあたっての第一段階ってことで何かねぇ?俺にしてほしいこととか」
怜央の問いかけに自然と首を傾げた。
してほしいこと?何かあるかな……。
うーんと唸る私を見ながら怜央がベッドに寝転ぶ。
その瞬間、ハッとひらめいた。
「あ、ある!抱きしめながら眠るのはやめてほしい」
「苦情かよ」