【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
◇真実を知った想われ姫
7月10日。
今日は弟、志貴の誕生日。
毎年うちで開く小さなパーティーに、今年は怜央と志貴と同じクラスの女の子が参加することになった。
どんな子が来るのかな?
わざわざうちに呼ぶなんて、志貴とはどういう関係なんだろう?
私はパーティーの準備をしながら、そんなことを考えていた。
「あ、そろそろケーキ受け取りに行かなきゃ」
完成した料理にラップをかけて、毎年お世話になっているケーキ屋さんへと向かった。
甘いものが苦手な父には別にチーズケーキを用意する。
今年もそれは変わらない。
一昨年の志貴の誕生日を思い出しながら、馴染みのお店でケーキを受け取った。
その帰り道、ポケットの中でスマホが震える。
ケーキを傾けないように慎重にスマホを手に取ると、画面には知らない番号が表示されていた。
「誰だろう?」
一度目は無視したものの、何度もかかってくるその電話に「緊急時かも……」と不安を抱いた私は受話器のマークをスライドさせる。