【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「私だってもう怜央と離れるなんて無理だから。怜央がそうしたんだからね」
「ああ、責任取るよ。姫」
怜央がどんな顔をしているのか気になって顔を上げてみると、おでこに彼の前髪が触れる。
私は怜央の瞳に映る自分を見ながらそっと瞼を閉じた。
ほんの数秒重なった唇は一度離れると、また引き寄せられるようにしてくっつく。
「そういえばキスはまだしてなかったね」
「周りを騙すためにするもんじゃないからな。つーか、キスまでならするとか言ってんじゃねぇよ」
「あれは怜央だったから……」
「俺だから?へー」
怜央が目を細めて笑う。
扉の向こうで皆が聞き耳を立てているとも知らず私たちは、もう一度静かに唇を重ねた──。