【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
闇狼が窮地に追い込まれたのは高1の冬だった。
櫻子の病気が再発した直後、香坂が狂猫の総長になった。
香坂はなぜか怜央に固執していて、闇狼を潰すためなら手段を選ばない男だった。
「このままだと櫻子が危険だ。早く狂猫を潰さないと」
焦る僕に怜央は言った「俺の近くにいる存在を櫻子から姫に変えればいいんだ」と。
櫻子が僕の彼女だと言うことは、一部の人間しかしらない。
それ故に周りは櫻子のことを怜央の特別な人だと誤認している。
「でも、そんな相手いないだろ」
「いないなら作ればいいだけの話だ」
「その子を身代わりにするってこと?そんなことしていいのかな……」
「相手にもメリットを持たせて最後まで護り抜けばいいんだろ。じゃあ、頼んだぞ」
「頼んだって僕が探していいの?」
「お前は人を見る目があるからな」
こうして怜央に任された偽りの姫探し。
水瀬さんを闇狼に推薦したのは他でもない僕だ。
姫候補を探すために時には人の会話を盗み聞いたり、木に登って偵察をしてみたりもした。
その結果、降りられなくなった所を水瀬さんに助けてもらうことになったんだけれど……。偶然、近くにいた猫と一緒に。