【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
◇SS∼95点の真相∼
これは夏休みに入る少し前のこと──。
私は95点の答案用紙を握りしめながら隣のクラスへと向かった。
「怜央!」
私が彼の名前を呼びながら教室へ足を踏み入れると、周りの生徒たちが「修羅場か?」と息を呑む。
窓側の一番後ろの席に座っていた怜央の机に、私はさっき返却された小テストの答案用紙を叩きつけた。
「……なんだこれ」
「英語の小テスト。怜央も受けたでしょ?」
「知らねぇ」
「……本当にどうやって進級したんだか。って今はこんな話がしたいんじゃなくて。あの時の5点って何が足りなかったの?」
「あの時の5点?」
狂猫や櫻子さんのことで頭がいっぱいになり忘れていたけれど、怜央は私にバイトを依頼した日、5点という点数をつけた。
それは私が上手く怜央の名前を呼べなかったからだ。
その2日後、名前を完璧に呼べるようになった私に怜央は再び点数をつけた。
95点と。残りの5点は何が足りなかったのか。
私はまだその理由を聞いていない。
「私に95点って言ったでしょ。初めて待ち合わせした日!」
「……ああ、言ったなそんなこと。別に改めて説明するほどの話じゃねぇよ」
「いいから教えて」
「まぁ、とりあえず糖分でも摂れよ」
机の端に置いてあった紙パックのカフェオレに怜央がストローを差す。
「ほら」と言ってそのカフェオレは私に手渡された。