【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
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タクシーを降りた先にあったのは、広々とした敷地に立つ3階建ての一軒家だった。
真宙くんはなぜかその家の鍵を持っていて、ドアを開けるとまるで自分の家かのように足を踏み入れる。
「ここって真宙くんの家……?じゃないよね」
表札にあったのは知らない人の名前だ。
「ここは俺の姉貴と旦那さんの家。2人は旅行中で留守だから好きに使っていいって」
好きに使っていいってどういうこと?
「とりあえず上がって」
「う、うん」
玄関で靴を脱いだ私たちは真宙くんを先頭に2階へと続く階段をのぼる。
その先にあった部屋のドアを真宙くんが開けると、そこには見たことのない量の洋服が収納されていた。
「ここって衣装部屋?」
首を傾げる新那に真宙くんは「正解」と言って笑顔をみせる。
「瑠佳ちゃんと新那ちゃんには秘密にしてたんだけど、実は今日俺たちだけの花火大会を開こうと思って」
「花火大会?」
「そう。って言っても、ただの市販の花火だけど。雰囲気が出るように浴衣の準備をしたから、それぞれ好きなのを選んで」
真宙くんは簡単な説明を済ませると、階段を下りて1階へと戻った。