【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
……蓮見怜央って確か隣のクラスだったよね?
うちのクラスに何しにきたんだろう。
正直、なんの用であろうが私には関係ないし興味もない。
けれど、彼がこの教室にいる限り物音一つ立てることさえも許されない。そんな空気が永遠に続くのだ。
だから、一刻も早く自分のクラスへと戻ってほしい。
バイトを探す私のために。
そして、目の前でメロンパンを持ったまま固まる新那のためにも。
そんなことを思っていると、蓮見怜央が「なぁ、」と口を開いた。
これで平和な時間が戻ってくる。
……はずだったのだが、そうはいかなかった。
なぜなら、蓮見怜央が発した言葉の続きが「水瀬瑠佳いる?」というものだったからだ。
クラスメイトたちの視線が一気に私へと集中する。
これでは『私が水瀬瑠佳です』と名乗り出ているようなもので、その直後、蓮見怜央はよそ見もせずにこちらへと歩いてきた。