【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「今日、ここへ呼んだのは口裏を合わせるための確認と、あとはこれを渡すためだ」
怜央はそう言うと置いてあったレジ袋からこの間、私にくれた狼とは違う毛色の子を取り出し、新那へと向けて放り投げだ。
大きな放物線を描きながら空を飛んだ狼は、慌てて出した新那の両手の中にすっぽりと収まる。
「かわいー……。じゃなくて、なんですかこれ」
「防犯ブザー、使い方は瑠佳に聞けばわかる。一応、小川にも渡しておこうと思って」
「これ、可愛いよね。しっぽを引っ張ると音が鳴るの」
私がブザーの鳴らし方を説明すると、狼のお尻をまじまじと見つめる新那。
どうやらモフモフとした狼の可愛さに緊張が少しほぐれたようだ。
「この狼って色んな種類の子がいるんだね。どこに売ってるの?」
「特注だから店には売ってねぇよ。俺と真宙、あとは幹部の奴ら3人しか持ってない特別なものだ」
「じゃあ、私が持ってるのは……」
「元々は俺の。他の奴らも彼女に持たせてる」
知らなかった。
怜央から渡された狼はこの世に5体しか存在しない内の1体だったんだ。
「あれ?じゃあこれは……」
新那が渡されたこの青の毛色の子にも持ち主がいるってことだよね?