【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「じゃあ、その親友は瑠佳にバイトを辞めさせた後、責任取って一緒に働いてくれんのか?違うだろ?だから、外野だって言ってんだよ」
「それはとこれとは話が違うでしょ。私は新那にそんなこと求めてない」
「なら、瑠佳が家計のためにやるって決めたバイトに何度も口出すのもおかしいだろ」
「それは私を心配して言ってくれてるの」
「だから、心配してるなら口だけじゃなくて行動で示せって言ってんだよ」
「あ、あの!もうやめてください。悪いのは何も考えていなかった私です」
お互いに一歩も引こうとしない私たちを見て、新那が止めに入る。
「新那……」
「蓮見くんの言うように私、口だけだった。ごめんね、瑠佳ちゃん」
「そんなことないよ。新那は何も悪くないって」
「ううん。あの……私にこれを持つ資格はないのでお返しします」
新那はそう言うと手に持っていた青毛の狼をレジャーシートの上へと置き、靴を履いた。
「そういえば私、数学の課題まだだった。6限が始まる前にやっちゃいたいから先に戻るね」
「ちょ、新那」
私の呼びかけにも足を止めず、走り去っていく新那。
「私も教室に戻るから」
課題があるなんて絶対に嘘。
新那はきっと、どこかで一人泣いている。
あの時みたいに──。